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甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし、旦那様は冷酷陛下です!?)  作者: 夕立悠理


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13/16

つかぬこと

「賭け……ですか?」

「はい」


 ルクシナード様は、寝室の花瓶を指差した。


「あの花瓶のように、この城には至る所に花が飾られています。そこで案内の最後にどの色の花が一番多かったか聞くので、当ててください」


 ……なるほど?

 でも、それだと……。


「私に有利すぎではありませんか?」


 私は答えを見て回っているようなものなのに。


「目的は、ミレシアにこの城を憶えてもらうことですから。挑戦してみますか?」

「はい、ぜひ!」

 せっかくの機会だ。してみたい。


「でも、賭けということは、何かを代償とするのですよね」

「……そうですね。賭けるのは、これでどうでしょうか?」


 そう言ってルクシナード様が差し出したのは、カラフルな色の粒が入った小瓶だった。

 ルクシナード様が振るたびに、さらりと中の粒が揺れるその瓶に、釘付けになる。


「……それはなんですか?」

「お菓子です。最近、民の間で流行っているようです。もし、ミレシアが賭けに勝ったら、この瓶ごと差し上げます」

「ええっ!?」

 瓶ごと!?

 思わず、ごくりと息を呑む。


「では、私が負けたら?」

「一粒だけ差し上げます」


 それでももらえるのね……!

 でも、せっかくなら、小瓶ごと欲しいわ。


「わかりました。頑張ります」


 とってもやる気に満ち溢れながら頷くと、ルクシナード様はくすりと笑った。


「甘いもの、お好きなままなんですね」

「そうですね、甘いものは昔から……」

 昔は、甘いものが好きだなんて幼稚よ、と口では言っていた。だから、パーティーなどでも極力食べないようにしていた。

 本当は、大好きだったのに。


 そのことをルクシナード様は知ってる……?


 幼少期の私が甘いものを好きなのを知ってたのって、誰だったかしら。


「ミレシア?」

 一瞬、繋がりかけた記憶は霧散し、後に残ったのは、賭けへのやる気だけだった。

 不思議そうな顔をしたルクシナード様に微笑む。

「はい、頑張ります!」








 ーー城内をルクシナード様にエスコートされながら、歩く。

「ここが、食事の間ですね。そして次にーー」

 ルクシナード様は、終始笑顔で説明してくれる。


 しかし……。ルクシナード様が私に微笑むたびに、周囲の視線が、すごい!


 その視線は、皇帝陛下がいらっしゃる、という畏怖の視線というよりも、えっ!? あの皇帝陛下が笑っている!? という驚愕の視線だと感じた。


 ……やっぱり、冷酷皇帝と私の祖国まで届いていた噂は本当なのかもしれない。


「ミレシア?」

 きょとん、とした顔で私を見ているルクシナード様からは、想像もできないけれど。


「いえ、思った以上に広くて驚いています」

 これは本音だ。

 この皇城は、私の祖国の1.5倍……いや、2倍はありそうだった。


「そうですか? ミレシアを迎えるので、なるべく過ごしやすくはしたつもりですが」


 ……え?


「つかぬことをお伺いしますが、増築など……」

「はい。建て替えました」


 満面の笑みーーそれこそピカピカと輝きを放っているーーで言われた言葉。


 建て替えました。

 建て替えました。

 建て替えました。


 何度も頭の中で繰り返して、ようやく理解が追いついた私の頭は、現実を受け入れるのを拒否した。


 あらゆる回路が強制遮断され……、つまり。


「ミレシア!?!?!?」

 意識を失った。

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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