翌朝
「おはようござざいます、ミレシア」
美しく穏やかな声に、微睡から目を覚ます。
なんだか、とてもいい夢を見た気がする。
まるで、思い描いたことがなんでも叶うような。
「……ん」
ゆっくりと瞬きをすると、温かな青銀の瞳と目が合った。
「おはようございます……!?」
一瞬、ここがどこかわからなくて混乱したけれど、徐々に記憶が戻ってくる。
ここは皇帝夫妻の寝室で、私は目の前の麗しい皇帝陛下と結婚したのだ。
その皇帝陛下の名前は……。
「ルクシナード様……」
「はい、ミレシア」
ルクシナード様は嬉しそうに目を細めた。
「……よかった。俺の名前、覚えていてくれたんですね」
さすがに一晩寝たぐらいで、忘れないとは思うけれど。
でも、自分の状況がすぐに掴めなかったので、文句は言えない。
「ミレシア、朝食はどうしますか?」
ルクシナード様は、寝癖がついてる、と微笑んで私の頭を撫でながらーーその姿も非常に麗しいーー首を傾げた。
「お腹は……空いています」
いいタイミングで、ぐぅ、と腹の虫も自己主張する。
恥ずかしい。
けれど、それに気分を害した様子もなく、ルクシナード様は、微笑んだ。
「では寝室まで、食事を運ばせましょうか」
ええっ!?
そんなことをしてしまっていいの!?!?
驚く私に、ルクシナード様は笑った。
「ふふ、今日は特別な朝ですから」
……そうか。
今日は初夜の翌日。
夫婦仲がいいことを表しておくほうが、これからのためになるものね。
「でも、よかった」
ルクシナード様はほっと息をついてもう一度私の頭を撫でた。
「よく眠れたようですね」
それはもう。
悪い夢どころか、とてもいい夢を見た。
「はい。ありがとうございます」
「……!」
私が微笑むと、なぜだか、ルクシナード様は顔を手で覆った。
「あの……?」
「いえ、目が潰れそうなほど眩しくて」
「えっと?」
カーテンはまだ開けていない。
隙間からわずかに光が漏れているものの、眩しいといえるほどではない。
「さすがは、俺の太陽ですね」
まだ眩そうに目を細めながら、私を見られれば、さすがにわかる。
だが、そんなに好意を示される理由が謎なので、どのような表情をすればいいのかわからない。
ぐぅー。
「!」
もう一度なった腹の虫。
先ほどまでとは違う種類の気まずさを感じる。
「……ふふ。早く、朝食を運ばせましょう」
笑ってそう言ってくれるのは、寛大以外に表しようもないけど。
ルクシナード様が、手を叩く。
すると、音も立てずに、アキが現れた。
アキ!?
あなた、どこに潜んでいたの!?!?
「朝食の用意を」
「かしこまりました」
深々と頭を下げて、アキはすっとまた音も立てずに姿を消した。
まったくアムリファは慣れないことばかりだわ。
私が驚いている間に、ワゴンテーブルに乗せられ、朝食が運ばれてくる。
おいしそうな香りが漂よっていて、また腹の虫が自己主張激しく鳴き始めた。
「では、食べましょうか」
「はい!」
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