前提として説明させていただきます。
私はただの契約社員OL。
来客対応時のお茶くみとコピー、備品の発注や文書の作成、データ入力等、悪く言うならば「誰にでもできるでしょ」な仕事をしている。ついでに笑顔を振りまいて、人にも笑ってもらえることで仕事もらえればいいや。私としてもそのくらいしか思っていない。私の代わりはどこにでもいる。
そんな私が楽しんでいるのが所謂国内文学だった。たくさんの文庫本に埋もれるようにして生活している。娯楽費はすべて本代に回っていたし、本を収集しすぎて床が抜けたことがあるとか聞いたことがあったので、自宅もこじんまりとしたアパートの1階。これなら床が抜けても大したことにならないだろうという魂胆である。
そんな本の虫な私が毛嫌いしていたのが、流行りの「異世界転生でチートして無双するやつ」ジャンルのライトノベルだ。そんな現実から逃げ出すような人間がたとえ世界が変わったとしても上手く立ち回れるわけないでしょと冷ややかな目で見ていた。近代文学および現代文学こそ至高。極端に言えばそんな感じで斜に構えて流行りを見ていたのである。
なんてったって私も誰にでもできる仕事しかしないんだし、飛ばされるのって学生やニートが多いみたいだし。そんなに飛ばされたくらいで無敵になれるなんてあるわけがないじゃん。都合良すぎんじゃないの?
そんな風に思っていたのに‥