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6 招待状が終わりの始まりでした

 寝込んでしまってから4日後、魔術の先生が来られて、子供の体は膨大な魔力を操るには不十分だと先生から注意されてしまったわ。それから、焦らずに少しずつでいいと言われたの。


 だから、私は基本の4属性を覚えることにしたの。1属性ごとにコツコツと覚えていった。半年掛けて基本の4属性の上級編まで覚えることができたわ。先生にも随分上達が早いと褒められたの。嬉しくって、アレクにも報告したの。


「なんだ、やっと4属性を覚えただけなのか、いつになったら浮遊が出来るのだろうな」


 顔を歪めながらそう言われた。4属性を覚えただけ……先生には褒められたのにアレクには褒められない。悔しい。


 浮遊は魔術ではなくて魔導術になるの。魔力の使い方によって術式が変わるので、それぞれ呼び名が違ってくるの。


 例えば、光を灯す。これは魔力を光の属性に変換しただけ、だから、魔法と呼んでいるの。

 炎の塊を対象物に当てる。これは魔力を火の属性に変換して、動きを与えているので、これを魔術と呼んでいるの。

 そして、魔導術。これは魔力を2つ以上の属性に変換して動きを与える事を指すの。水と風を合わせて岩を斬るという感じね。


 魔法以外は魔力で術式を描かなければならないので、魔力制御が出来ないと難しい。慣れると、瞬時に術式を組むことが出来るらしいけど、そこまでになるのが大変なの。


 先生に早く魔導術を覚えたいと言ったら、『まだ、魔力が安定していないので、先に光と闇の属性を覚えましょう』と言われてしまった。


 15歳になった頃には魔導術も随分使えるようになったわ。でも、空を飛ぶことは苦手だったの。物を媒介にしてやっと安定して飛べることができたけど、その姿を見てアレクが何時も嘲笑ってくる。


「いつまで、自立して飛べないんだ?そんな、鞄に縋り付かないと飛べないなんて、いい笑いものだ。そんなふうに魔力を使えこなせないから、いつまで経っても魔術が下手なんだ」


 大きな鞄を浮遊させた方が私自身を浮遊させるより安定性が良くて、魔力がよく馴染むのよ。先生も物を媒介にした方がいい人もいるから、問題ないっておっしゃっていたわ。

 それに私の魔導術はそんなに下手なことはないわ。確かに術式を組むのに時間が掛かってしまうけど、きちんと魔導術は発動しているもの。


 そんな時だった。聖女様が現れ、カウサ神教国の王族と結婚をすると聞いたのは。


 私は大公である伯父様に呼ばれ、執務室を訪れた。そこにはアレクも居て、一体何を言われるのかドキドキしたわ。


「エリザベート、こちらに来なさい」


 そう、伯父様に言われアレクの隣に立つ。


「カウサ神教国から正式な招待状が来た。聖女と王族の結婚式の招待状だ」


 伯父様が金色に縁取られた紙を私達に見せる。確かに一ヶ月後にある結婚式の招待状だったが、時間もギリギリの上、書かれている王族の名前に問題があった。アレクもそれに気がついた。


「父上。こんな戯言に付き合う必要はないのでは?この王太子、確か(つがい)持ちでしたよね。去年それで盛大な挙式を挙げたと聞きましたが?」


「マリートゥヴァ王太子妃は側妃となるそうだ」


 信じられない。いくら聖女を王家に迎え入れるためとはいえ、正妃として迎えた女性を側妃にするなんて!


「しかし、今回はなぜ挙式の招待状がこちらに届いたのですか?」


 アレクが伯父様に尋ねる。確かに去年の王太子の挙式の招待状はこちらには送られて来なかったわ。商人や吟遊詩人達がそのような話をしていたので耳にすることはできたけど、なぜかしら?


「聖女のお披露目だ。白の神に選ばれた聖女がいることを知らしめたいのだろう。そして、自分たちの方が神に認められていることを我らに教え込ませたいというところか」


「そして、隷属しろと言われるのですね」


 アレクが伯父様の言葉を継ぐ。その言葉に伯父様は頷き、私に向かって言葉を続けたのです。


「だから、聖女の挙式には私と女神の寵愛を持つエリザベートが参加することに決めた。アレクは私が居ない間、国を守って欲しい」


「わかりました」


 そうして、私は伯父様と共にカウサ神教国の神都アリシャに行くこととなりました。


 旅立ちの日。そして、間近で言葉を交わした最後の日。アレクは私に言葉をくれました。


「エリザは本当に何もできないから、父上の側で立っているだけでいい。わかったな。それと、これはお守りだ」


 伯父様の邪魔をするなとクギを刺され、赤いペンダントを渡されました。




補足

時代背景として、この時代はエリザベートの現在より移動することが困難で 、(つがい)に会うことは皆無と言っていいほど無かったため、(つがい)に対する知識は乏しく、(つがい)主義ではなかったのです。

 ですので、(つがい)というのはお互いが伴侶として認識している者たちというのが周りの反応だったため、引き離しても問題がないと思われていました。



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