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5 初恋は実らない

〜3千年前〜

 私、エリザベート・ラースはラース公国の国を治める一族の末端に生を受けたわ。直系ではなく、伯父が大公を努め、父である大公の弟が補佐をして国を治めていた。


 ラース家はカウサ神教国に囲まれた国なの。ここ数十年カウサ神教国に何度も侵略をされかかっているけれども、その侵略を免れているには訳があるの。私も持っているものなのだけど、女神からの祝福を持つって生まれてくるのがラース家の特徴なの。


 私の場合は『女神の寵愛』女神の色だと言われている赤い髪に金色の瞳、その色を持って生まれた私は女神の寵愛の加護を与えられていた。

 ときよりその色をもって生まれてくる子供がいるらしく、その子供が生まれると国が大きく発展すると言われているの。だから、私は生まれて直ぐに、次期大公となるアレクオールディア・ラースの婚約者として決められた。


 幼い頃のアレクは私に優しかった。私が4歳でアレクが9歳の頃、アレクは私の手をつないで散歩をしたり、膝の上で本を読んだりしてくれていたの。赤色が混じった金髪が風に揺れているのを見るのが好きだった。ピンクの瞳が私を見てくれているのが好きだった。


 そう、ラース家は体の何処かに女神の赤色を持って生まれてくるの。それは、髪であったり、目であったり、アザとして現れる人もいたわ。そして、何かしらの加護を女神から与えられているの。アレクは統治の加護。それと女神の魔眼。


 アレクの瞳であるピンクの瞳はナディアの魔眼と呼ばれているわ。これは、女神がただの人族の男に一目惚れし、男を人の(ことわり)から外す為に与えたと言われているけど、千年も前のことだから、それが真実かどうかなんてわからないわ。

 そのナディアの魔眼は人の身には大き過ぎるようで、普段は封じてあるの。でも、国の脅威となるものが攻めてくればその魔眼の効力が発揮されることとなる。


 そうね、3年前にカウサ神教国が攻めて来た時には伯父様が戦場に立ち、カウサ神教国の神兵に魔眼を使ったと聞いたわ。ただ一人の大公が10万の神兵達を狂わせ、同士討ちをさせた。ナディアの魔眼。それは魅了眼であり、相手を思うがままに操る事ができる恐ろしい魔眼なの。

 だからこそ、白き神を掲げ自分たちを神の御使いだといい、攻めてくるカウサ神教国を退け、大陸の北側で唯一白き神以外を崇める国として残ることができたの。



 私が5歳の頃から少しずつアレクの態度が変わっていったの。丁度、次期大公として伯父様について勉強を始めた頃だったと思うわ。


「エリザ。まだ、こんな文字の練習をしているのか?」


 5歳になると私も勉強の時間が作られるようになったの。でも、文字の練習を始めたばかりなのに……。


「ここは、昨日から始めたばかりなの。先生もゆっくり書けばいいって言ってくれたわ」


「ふーん。ゆっくりね」


 そう言ってアレクは私の部屋を出ていってしまった。え?それだけ言いにきたの?


 また、あるときはどうしても読めない所があったので、書庫で調べものをしていたら、丁度アレクが書庫に入ってきたので聞いてみる。


「こんなことも読めないのか」


 と、顔を歪めながら言われてしまった。そこまで、顔を歪めなければならないことのなの?

 だから、私は必死で勉強をしたの。お母様にはそこまで頑張らなくていいのよって言われたけれど、アレクに軽蔑されるのだけは嫌だった。



 10歳になると魔術の勉強も始まったわ。始めは何の属性の魔術が使えるか調べるのだけど、私は火、風、水、土の4元素に加え光と闇を使える事がわかったの。みんなは流石、女神の寵愛を授けられたエリザベートだなって褒めてくれたけれど、アレクは私を見下ろしながら


「何だ、まだ属性を調べただけか」


 と言って、去っていった。調べただけ……。確かに、一日掛かって調べたけれど、魔力がまだ安定しないから、一つ一つの属性を調べるのに時間が掛かってしまうのは仕方がないことだと思う。


 15歳になったアレクは伯父様に付いて、国中を回っているので中々会えないのに、たまに会えばそんな言葉が返ってくる。

 何がアレクに認められない事があるのかわからなかった。


 だから、魔術も頑張ろうとしていたら、倒れてしまったの。高熱が出て3日程寝込んでしまったわ。その間にアレクが来たような気がしたけど、なぜか昔の様に優しいアレクが頭を撫ぜていたから、きっと私が見たかった夢だと思う。

 その時、何故か島の話をしていたの。きっとその時の空に島が飛んでいたのだと思うの。普通の人には見えず、神の加護を得たラースの一族には見える空に浮かぶ島。


「あの島に行ってみたいの」


「飛んでいる島か?普通は行けないだろう?」


「お祖母様がね。行ってみたのですって、とても、不思議な島だったとおっしゃっていたわ」


「お祖母様が?」


「光る花があるのですって、木の実から生まれる鳥もいるのですって、行ってみたいなぁ」


「そうか、元気になったら連れて行ってやるよ」


「本当に?」


「ああ」


「約束ね」


「ああ」


 その笑顔は、昔の大好きだったアレクの笑顔だった。




 その約束が叶うことはなかった。だから、夢。あの約束も夢。あの笑顔も夢。


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