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第一章 レストラン創業! 4-シューレという男


あまり広くない部屋に入ると、そこは大きく現像された写真がたくさん壁に貼られていた。そして部屋の中央には……生首。


トレインが「ひっ!!」と声を上げる。そしてその顔に見覚えがあるらしく目をぱちくりとさせた。



「これは……まさかアーシェルヴィアで有名なあのゴードン卿かい!? スヴァン、もしやこの人はかなり凄腕の殺し屋なのか!?」


「そんな殺し屋があっさり捕まるわけねーだろ」



スヴァンのバッサリしたツッコミ。しかしトレインは理解が追い付いてないようだ。



「?? ということは、これは……?」



そこにシューレという男が『答え』を告げる。



「あー、これは僕が作った特殊メイクのマスクだよー」



それを聞いてダルクは腕を組みながら「なるほど」とうなずいた。



「それにしてもすごくリアルだな。本物かと思った」



シューレは部屋の奥からお茶を用意して戻ってくる。

三十代後半に見える顔なのだが、髪はかなり白髪まじりの灰色で天然パーマ。くるくるしてる。

差し出されたお茶のグラスには花が浮いていた。


こちらは襲撃しているというのにその戦意も鈍ってしまいそうな和やかな雰囲気。

スヴァンはシューレと仲が良いのか、拳を軽くシューレの小太りな腹にあててぷにぷにしてる。



「てめー、今度は誰をだまそうってんだ? 俺はまだだまされたこと根に持ってんだからな」


「やめてよースヴァン。あの時も今回も別に僕がだまそうとしてるわけじゃないんだからー」



そのふんわりとした口調に、トレインはいまだ気を許していない。



「君、その口調と言いこのお茶と言い……、僕らから戦意を無くさせようとしてるんじゃないよね?」



緊張と警戒があふれているトレインの語気にシューレもさすがに気づいたようで、軽く両手をあげて手のひらを見せた。



「そんな、誤解だよー」



スヴァンはトレインの警戒を解くようにその肩をポンポン叩く。



「そうそう。こいつの変な口調は元から。茶を出すのも俺たちをもてなそうとしただけ。ちょっと見てな」



そう言って、出された花入りの茶を軽く飲んで「うん」とうなずいた。



「何も入ってねぇな。ダルク、お前も飲んでみろ。俺より舌が利くからわかるはずだ」



そして、しばらく黙っていたダルクにシューレが入れた茶を渡す。


ダルクはというと、壁に架けられた写真をずっと眺めていたらしく、お茶を渡されても少し遅れて気づくほど食い入るように見ていた。

そしてお茶を一飲みして、「ああ、何も入ってない」と言ってからようやく写真から目をそらす。


「シューレ、君はすごい技術を持ってるな。この写真の顔は全部作ったものだろ? どれも本物の顔を見かけたことはあるんだが、そっくりだ」


「ありがとうー、光栄だよ」



トレインはちょっと警戒を解いたようだ。



「君、もしかしてここで自由に動けているのはステレッド兄弟に雇われているから?」


「うん、そうだよー。次の商談で僕の作った特殊メイクを使いたいんだってー」


「……それが悪事でも、構わないのかい?」



トレインの疑問に、シューレは「んー、そうだなぁ……」と言いながらそばに置いてある特殊メイクの顔をなでた。



「僕は、これを作ったり何かを飾るのが好きなだけで、何が善で何が悪とかあんまり考えたことはないけど……よく考えたら僕の作品は悪いことにしか使われていなかったかも」



その語尾は少し悲しそうに口ごもった。



「でも」



シューレはそう言ってまっすぐにトレインたちを見る。



「君たちだって、これから悪事を働くんだろう? スヴァンのこの武器は、人の命を奪うため。そうでしょ?」


「それは……」



トレインを始め、ダルクたちは沈黙した。


その通りだ。人の命を奪って、金を稼ごうとしている。シューレになんだか痛いところを突かれたが、本人はそれに気づいていない様子で話をつづけた。



「それで、君たちはなんでここに来たのー? お金が必要なの?」



スヴァンは切り替えが早く、その問いかけに答えた。



「おう。俺たちレストラン始めようと思って。な? ダルク」



真剣な面持ちだったダルクが少し遅れて気持ちを切り替える。



「あ、あぁ。そうなんだ。レストランを開くために金が必要で」



その言葉にシューレは小さめな目を見開いた。



「それはまた、面白い理由だねー」



本当に驚いているようだ。しかしダルクはというと、少しその顔に一瞬陰りが生まれる。



「ダルク、もしかしてここに来ておいて『やめる』と言い出すんじゃないだろうね?」



その陰りを察知したトレインがそう声をかけた。

スヴァンは「なんで?」と言いたげな顔をする。


ダルクは、その場全員の顔を見た。そして一つの決意を決める。



「やめない。襲撃はこのまま続ける。だけど……少し手法を変えよう。――俺たちは、これから人殺しはしない」


「は??」



スヴァンはその言葉に目を見開いた。トレインはしょうがないな、と言いたげな優しい瞳に変わる。



「シューレ。ステレッドに出会う前に君に出会ってよかったよ。そうだよな、これからレストランをやる人間が殺しなんてありえない。君はスヴァンの武器を人の命を奪うためと言ったが俺たちはそれを変えてみせるよ」


「ちょ……、ちょっと待てよ。なんだそれ?」



ダルクの決意に一番動揺しているのはスヴァンだった。


彼の中の「当たり前」が、変わろうとしている。



「スヴァン、お前の特技が活かせなくて悪いな。次の戦闘、殺し屋を殺さず倒せるか?」


「そんなこと言ったって、どうやって……」


「さっき見張りの男に使った薬を使おう。俺たちの顔を極力見られないようにしながら、倒してほしい。頼む」



調子が狂ったようにスヴァンは頭を掻いた。



「んな無茶な……」



レストランの夢が、血塗られないように。


トレインはダルクの傍らで、彼のまっすぐな気持ちを噛み締めていた。



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