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第一章 レストラン創業! 2-未完成の未来


「資金調達ってーと……何やる?」



スヴァンの言葉にダルクとトレインは神妙な面持ちで腕を組む。



「麻薬は今回難しいかもな。この前の件で警察が出てきたからしばらくは売る方も買う方もおとなしいと思う」


「……となると、別の手段か。そうだ、さっき僕の友人の情報屋に会ったんだ。その子の話によると、最近ここらで弱者からお金を巻き上げる悪名高い貴族がいるらしい」



ダルクはそれを聞いてピンときたようだ。



「ここらの有名な貴族で悪い噂を聞くのはステレッド兄弟だな」



トレインはダルクに人差し指を向ける。



「ご明察。ステレッド兄弟は殺し屋を雇って裏で色々な悪事を働いてるようだよ。その中の一つに自分の領地に住む平民たちから色んな難癖をつけて金を巻き上げてるみたいだ」



スヴァンはやれやれと言った様子で苦笑する。



「領民から金巻き上げるなんて古風なことしてんな。もう貴族が威張る時代じゃねーぞ?」


「しかし、そのおかげで俺たちも痛み入ることなく潰しにかかれそうだ」



ダルクの皮肉めいた言葉に残る二人もうなずいた。



「じゃあ決まりだね、僕たちの狙いはステレッド兄弟。行動は早い方がいいと思うけど、いつ決行する?」



スヴァンは腰に収めていたナイフを引き抜いて笑う。



「今夜。俺の相棒であるこいつが言ってる」



ダルクも目を伏せてうなずいた。



「同意見だ」



トレインは手を軽く叩く。



「では、今夜決行だ。久しぶりじゃないか、こういうの。スヴァンの腕が鈍ってなきゃいいな、僕はあまり戦いは得意じゃないし」



そうだな、とダルクが続く。



「俺たちの主戦力はスヴァンで、次に戦力になるのは俺だが……正直鈍ってそうだし。トレインは他の事に長けてるから気にしなくていいぞ」


「ふふ、ありがとう」


「ほーんと、なんだかんだお前らとは長いけどよくこの少人数で切り抜けてきたわ。いつだっけ、全員縄で縛り上げられてもう駄目だって思ったとき」



トレインがうーんと考える素振りをしてから答えた。



「二年前だね」


「あれは正直もう俺たちも終わりか……って思ったよな。あの時は確か……敵がいなくなった隙にスヴァンが犬を飼いならして切り抜けたんだよな」


「そーそー。んでようやく逃げ切れたと思ったら今度はトレインが結婚詐欺でひっかけた女がナタ持って追っかけてきて……あの日は最悪だった」



三人はその時を思い出して苦い表情をする。

スヴァンはぶんぶんと首を振ってその思い出を消し去った。



「もういいや。それより腹ごしらえしねぇ? ダルクが看板発注する前に俺が飯代をよけておいて良かったぜ」


「でかしたぞ、スヴァン」


「しょうがない、これはスヴァンの手柄だね。今日の昼食はスヴァンが好きなものを買ってくると良いよ」


「よっしゃ、ちょっくら行ってくるわ」



スヴァンはお金をぐしゃっと握りしめて出て行った。


その後ろ姿を見送ったトレインは自分たちの店になるであろう建物を見渡す。



「さて、僕もこの中を探検しようかな」


「そういやトレインはまだ見てなかったな。好きなだけ見てくれ」



トレインはカウンター越しに厨房を見た。



「カウンター席はちょっと少ないけれど、奥の厨房はわりと広いんだね。ホールも結構広いし、申し分ないよ! ここは元々レストランだったんだろう? リフォームしなくてもいいのはかなり助かるね」


「そうだな……」



ダルクは少し上の空のような返事をしたので、トレインは振り返ってその顔を見る。



「ダルク?」


「いや、ちょっと考え事だ。そうだトレイン、さっきスヴァンにも言ったんだがこのレストランの秘密の空間を見てみたくないか?」


「秘密の空間? なんだい、武器庫でもあるのかい?」



冗談っぽく言うトレインにダルクは数歩歩いて振り返り、ニヤリと笑った。



「間違いではない」


「え」


「こっちだ」



そうしてトレインがダルクに連れていかれた先は。


『STAFF ONLY』の扉の先の通路にある下へ続く階段があり、それを降りてダルクが電気をつけるとその空間は現れた。



「え……!? まさかこれって」


「そう、住居スペースだ。ちょっとまだ殺風景だけどな」



そこにはリビングのような広い部屋に、いくつも個人部屋につながる扉がついていた。まだ物が置かれてないせいで余計に広く感じる。



「信じられないよ、レストランの中だけでも驚いていたのに住居スペースまであるなんて! しかも個人部屋もある! ダルク、君がどうやってここを買ったか知らないけどよく見つけたね、こんないい物件」


「実は元々所有していたんだ。ある男から託されてね。でも大切に使いたかったから言えずにいた」


「そうか……。君が大切にしておいたものをようやく使うということは、勢いで言ったレストラン経営だろうけど本気なんだね」


「まぁ、そうだな」



ダルクが夢を見ているような優しい瞳で喋っているのを見たトレインは深くうなずいた。



「わかったよ。僕もその夢が叶うように手助けしよう」



……二人が、いや、三人が思い描くのは未完成の明るい未来。





「帰ったぜー」



しばらくしてスヴァンが大量の食べ物を持って帰ってきた。

それを二度見したトレインとダルクは口をあんぐりと開ける。



「ちょっと待ってくれよ、スヴァン……なんだいこの量は!」


「確かに好きなものとは言ったが……」



スヴァンが買ってきたものは肉料理中心で、その中でも一番目を引くものがあった。



「そして豚の丸焼きを買うにしても頭だけ持ってくる奴がどこにいるんだい!?」



スヴァンは豚の丸焼きの頭を厨房に置く。



「しょうがねーだろ、タダ同然だったんだから」


「何がしょうがないんだい……」



ダルクは口元を抑えている。



「う……さすがに豚の丸焼きとなるとえぐいな……食べる気が起きないぞ」


「そりゃあ、俺もだけどよ。頭なんてどこ食えるのか知らんし」



あっけらかんと言い切ったスヴァンにトレインは再び呆れた。



「だからそれなら持って帰ってこなければいいだろう……」



そうして三人は豚の頭を見ないようにして食事をとったのだった。


もうじき夜になる。彼らの久々の戦闘が始まるのはおそらくもうすぐだ。




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