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15話

 私が王都にジェフと一緒にやって来てから、しばらくが過ぎた。


 到着したのは朝方だったが、私もジェフも疲れているだろうからと今日は互いにゆっくりしようと決める。ゼンが簡単に、私付きのメイドを紹介してくれた。


「今日からヒルデガルト侯爵令嬢様をお世話致します、メイドのイーラとエルナです。二人とも、挨拶を」


「初めまして、私がイーラです。今日からよろしくお願いします」


「あたしがエルナです、お嬢様。よろしくお願い申し上げます」


 先に年かさとおぼしき女性が挨拶をした。緩やかにウェーブした黒髪を肩で切り揃えている。目はキリッと切れ長で、淡い琥珀色だ。もう一人の女性はまだ若い。私より、二、三歳は上だろうが。こちらは真っ直ぐな赤茶色の髪を背中につくまで、伸ばして後ろで一束ねにしている。目は垂れ目で濃い緑色だ。

 年かさとおぼしき女性がイーラ、若い方はエルナだとゼンが念押しするように言った。


「では、早速ですが。客室にご案内しますね」


「よろしくね、えっと。イーラにエルナ」


「はい」


「行きましょう」


 軽く挨拶の言葉を述べると、最初にイーラが次にエルナが答える。三人で客室に向かった。


 客室はなかなかに趣味が良く、落ち着く雰囲気の部屋だ。壁紙は淡い黄緑色で家具や調度品類も飴色に輝く。応接間に、寝室や洗面所に浴室、不浄処(ふじょうどころ)もある。寝室のクローゼットや棚の中には一通りの物は揃っていた。イーラが丁寧に説明してくれる。


「寝室の奥に、2つドアがありますが。左側が不浄処です。右側は洗面所と浴室になっています」


「わかったわ」


「クローゼットの中には、お嬢様に必要なドレスやワンピースなどが一通り揃っています。けど、何か足りない物がありましたら、いつでもおっしゃってください」


「ええ」


「では、棚についても。お嬢様がお持ちの物があれば、そちらに入れておきますので」


 私は頷くと、寝室の中をぐるりと見回した。えっと、左側が不浄処で。右側は洗面所と浴室ね。確認してから、返答した。


「丁寧にありがとう、よく分かったわ。イーラ、エルナ。これから、改めてよろしくお願いするわね」


「はい、お願いします」


「よろしくお願いしますね!」


 イーラが真面目に、エルナは元気よく答える。私は2人を見てにっこりと笑いかけた。


 夜になり、私は客室にて夕食をとる。食べやすいようにあっさり系の物が出された。白身魚のムニエルにコンソメスープ、野菜のサラダ、白パンの4品だ。どれも好物だったので助かる。ゆっくりと時間を掛けて味わった。まあ、気がついたら完食していたが。イーラとエルナが手際よく片付ける。


「……凄く食べやすかったわ」


「そう言っていただけますと、料理長も喜びます」


「ええ、美味しかったわよ」


 また、言ったら。イーラは嬉しそうに笑った。


「実は若様から、手紙でお嬢様の好物を教えていただいたんです。料理長は何回も読み込んでいた程でして」


「あら」


「若様、本当にお嬢様の事が気に入ってらっしゃるんですね」


「……エルナ」


「いいじゃないですか、若様がお好きな方なんですし」


「すみません、お嬢様。エルナはまだ、メイドになってから日が浅いものでして」


「あ、気にしていないから。イーラが謝る事じゃないわ」


 私が言うと、イーラは苦笑いした。


「そうですか、けど。エルナにはよく言い聞かせておきますね」


「はあ」


 イーラは黙って片付けを再開した。エルナも気まずそうにしながらも、同じようにするのだった。


 湯浴みを済ませて、夜着用のネグリジェに着替えた。髪は解いて緩く束ねている。ちなみに、イーラが温風魔法とやらで乾かしてくれた。ものの10分もしない内に、髪は乾いた。これには凄く驚いたが。寝室に行き、ベッドに入る。イーラやエルナは続きの間に退出していていない。私は寝返りを打ちながら、瞼を閉じた。深い眠りについた。


 翌朝、5の刻に目を覚ました。イーラとエルナが起こしに来る。


「おはようございます、起きてください」


「……ん、おはよう」


「こちら、歯磨き粉とブラシと。タオルです」


 イーラがテキパキと言いながら、手渡す。私は受け取るとベッドから降りた。昨日に説明された事を思い出しながら、右側のドアを開ける。閉めたら、蛇口を捻った。冷たい水が出てきて軽く驚く。それでも用意してあった木のコップに水を入れた。ブラシに粉をつけたら、歯磨きを始める。一通り、磨いたら口を何度かゆすいだ。口元やブラシなども軽く洗った。最後に洗顔も済ませる。タオルで水気を拭き取ったら、洗面所を出た。


 使ったブラシなどをイーラに手渡す。エルナが用意したワンピースに袖を通した。色は淡い藍色でタートルネックに長袖のタイプだ。襟元や袖口にフリルがさり気なくあしらわれている。なかなかに控えめながらに上品なデザインだ。着替えを済ませたら、鏡台に行く。


「お嬢様、髪型はどうしましょう?」


「そうね、結い上げてくれないかしら」


「はあ、シニヨンになさいますか?」


「ええ、地味な感じで構わないわ」


「……わかりました」


 エルナは渋々と言った感じで頷く。香油を塗り込んだら、ブラシで丁寧に梳いた。艶が出てきたら、1本の三編みにする。グルグルと巻き、何本ものヘアピンで留めた。最後にアシアナネットで纏める。お化粧も薄くして、身支度は完了だ。イーラが戻ってきたのだった。

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