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Track.1 マッドシティ



 『ユナイト王国・西地区』には、『モータル』って街がある。そこで俺は生まれた。クソみてーな街だ。


 何がクソって、治安が最悪なんだ。毎日のように、誰かが撃たれて死んだとか、そんなニュースが入ってくる。それも、どこの馬の骨とも知らねえやつらが、殺されるんじゃない。つい昨日まで、一緒に酒を飲んでたやつが、翌日には脳みそをブチまけた死体で発見されるんだ。そーいう街なんだよ、モータルは。俺のいとこも殺された。もう3年前くらいの話だが…。


 俺も馬鹿じゃねーから、これが当然だとは思わない。『中央』だと銃撃事件なんてあった日には、連日のように大騒ぎだからな。それでもモータルじゃ、「ああ、いつものことか」ってなるだけさ。殺人が日常に組み込まれてるんだ。まあ、狂ってるよ。ここはマッドシティだ。


 殺されるやつらの大半は、ギャングの銃撃戦に巻き込まれて死んじまう。モータルには『グレイス』と『アッシェーズ』ってギャングの二大派閥があって、ここが小競り合いをしてて、まあこの2つだけじゃなくて『G.A』だとか『ダーツ』とかのグループもあって……。やめておこう、くだらない話だ。


  別に俺だって、望んでこの街に生まれたわけじゃない。物心ついたときにはもう、ここに居たんだよ。ママ、ジェワナ・コールの一人息子、ヘネシー・コールとしてな。


 父親はいない。もっと言えば、ママも俺の父親が誰かを知らない。まあ、そういうことさ。俺のママはみんなに"ビッチ"と言われるようなやつで、俺は"サノバビッチ"てこと。でも別にいいんだ、侮蔑には慣れている。ビッチでも俺の大切なママだ。


 でもママが俺に付けた名前だけは気に入らねえ。だって『ヘネシー』だぜ?。ママによると、「ずっと昔に中央で飲んだ美味い酒が忘れられなくて、その名前を俺につけた」らしいが…。自分の息子に、そんな名前をつけるかね?普通。第一、ヘネシーってのは名字に使われてる名前だ。下の名前に使うものじゃない。ママはそんなことも知らないんだ。学がないからな。まあ、俺も学はねーけど。


 だから15歳の頃から、俺は自分のことを『グッド・キッド』と名乗ることにした。『良い子』って意味だ。いい名前だろ?


 現に俺は、どこのギャングにも所属してない。誰かを殺したこともないし、殴ったこともない。盗みも薬も…まあ、そこはご愛嬌だ。ともかく俺は、この狂った街モータルに生まれて、良い子に育ったんだ。だからグッド・キッドてわけさ。


 ただそんなグッド・キッドも、一度だけ逮捕されたことがある。なに、大したことはしてないさ。ちょっとした住居侵入罪だ。コトの詳細は後で書こう。

 

 逮捕された俺は、西地区にあるしみったれたムショに入ることになった。1ヶ月の懲役だ。住居侵入罪くらいで1ヶ月も?初犯なのに?と思うかもしれねえ。たしかに俺もそう思う。でも、モータルで暮らしてるやつらの罪は、普通よりずっと重くなりやすいんだ。俺らはそんだけ、世間様から忌み嫌われてるってことだな。

 

 俺はその裁きを、すんなり受け入れたよ。ムショにいようがモータルにいようが、生活のレベルは大して変わらねえ。せいぜいママを悲しませねえか、ちょっと心配なくらいだ。


 俺はまだこのとき、このムショ入りが俺の人生を大きく変えることになるとは、思わなかったね。


 俺は出会っちまったんだよ、ムショであの男に。


 そう、『ロジック』にな──。


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