第7話 「ままなにあれー!」「こら!みちゃいけません!!」
「さながらカツアゲだな。」
「君の心を読むに横領の事かな?貰ったのは身分証だけだよ。君もよくそんなことが言えるね。」
汰百は、怒りの余り我を忘れて門番を怒鳴り散らかしたが、気を失った門番達には聞こえていなかっただろう。
「僕が命の危機を感じたのなんて大分前の話になるしなぁ…怖かったんだねぇよしよし。」
「今この場で素っ裸になってお前の夫だと豪語してからフラダンスと洒落こんでもいいんだぜ?」
「よし、王都の紹介をしようか。」
ウェドは珍しく焦った表情を見せ、スクラブ王国都心の紹介をテキパキと始めた。
(そんなにも制約の強い関係なのか…少しこの関係のルールについて聞いとかないと俺が何しでかすかわかんねえな。)
まあ、日々慎んだ生活を心得れば問題ないだろうが、彼には難しい話であった。
「ここはスクラブ王国の中心地。そこまではもう分かってると思うけれど、当たり前のようにこの地を踏み歩いてるが、ここは貴族しか侵入を許されていないんだ。何故かわかるかい?」
問われたならば考えるまでだ。
しかし彼は、ここに来てまだ間もない。
思いつくことが他にないため、彼女の言っていた王の話を軸に思考をめぐらせた。
「王がめっちゃ傲慢とか綺麗好きとかだからじゃね?お前を嫁にしようって魂胆の王だろ?ろくな王じゃねえと思うんだが。」
「まあ王に関しては僕も思う所があるけれど、それは少し違う。奴隷はね、その主が意のままに操ることが出来てしまう。そして貴族は地位が高いほど強い力を持った奴隷を買える。」
「なるほど?」
「人の多く集まる都心だ、気の短くて頭の悪い貴族同士が顔を合わせることだってあるだろう?皆ここで直ぐに奴隷を戦わそうとしてしまうんだ。」
「目が合えば即バトル!状態になるよな?街が持たないな、そんな事したら。」
彼は、奴隷の実力を先程の騎士団長フィリップを基準に想像した。
「そういう事さ。このルールは、日々奴隷たちの戦いを止めていたフィリップくんが王に直接提案した規定だ。それまでのやつれっぷりと来たら…ぷぷ。」
「いい性格してんなお前。」
クスクスと笑う非道な人間もどきに、彼は少し呆れを見せた。
「ところで俺たちは何をしにここに来たんだ?」
「…とても言い辛いのだけどね。僕、一切お金を持っていないんだ。」
「はぁ!?」
彼は徐にけつポケットから財布を取り出し中身を見た。
「2648円あるぜ!」
「えん…?」
(まあ、そうなるよねー。)
「…でもうん。そのためにここに来たんだ。ギルドに登録でもして依頼をこなしていけば、小遣いも溜まるだろうと思って。」
聞き慣れた言葉を口にした瞬間に彼は急に駄々を捏ねた。
「うわああ!!いやだいやだそんなお決まりムーブしたくねえよおおお!!さっきのおっさんから金巻あげればよかったろおお??」
「君に道徳心はないのかい?あと怖いだけだろう君は。」
薄々これからやる事を読めていた彼だが、予想通りの返答に絶望する。
先程の銃弾の恐怖もありこれ以上怖い思いをしたくはなかったのだ。
「なんて情けないんだ…。死んでも僕の夫だなんて口走らないでくれ。」
「ひでえよぉ…かえりてえよぉ…。知ってるか?争いは何も生まないんだぜ…。」
「戦わなきゃお金も生まれないさ。さあ行くよ。」
彼は、彼女にとてつもない力で体を持ち上げられ、ギルドの方面へ歩き出す。
「うわあああ!!嫌だ!!バイトでいいじゃん!!一緒に皿洗おうぜ!!奴隷でも売ってみる?!」
「バカ言わないでくれ。都心は何かと都合がいいんだ。入れないと困るよ。」
少年を担いだ少女の姿は、当然のように都心で人目を引き、瞬く間に噂になったのだった。