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結月祭シリーズ  作者: ホッシー@VTuber
最終章 縁ヲ結エル月兎
20/26

 皆さん、こんにちは。結月ゆかりです。

 突然ですが、大ピンチです。

「ふふ、貴方様。もっとくっ付いていいんですよ?」

「い、いや……その、あまりそう言うのは困るって言うか……」

 そう、私たちの目の前に神様が現れたのです。あの忌まわしき肉塊にマスターが骨抜きにされています。何がいいのでしょうね。ただの脂肪の塊ですよ。私にはわかりかねます。

「ちょ、ちょっとお兄さんから離れてよ!」

 やっと従妹が我に返ったのかマスターの腕を掴んでこちら側へ引き寄せます。意外にも簡単に神様から引き剥がすことができました。

「あらあら、残念です。もうちょっとでイ……あ、いえ何でもないです」

「……え、えっと。君は、本当に神様なの?」

 何か言いかけた神様ですがマスターはそれを無視して質問します。

「ええ、神様です。管轄は恋と魂です」

「恋と魂?」

「恋を司る神様ですよ。恋神とも言います。魂に関しては追々説明しますね」

 神様は恋神と呼ばれる神様らしいです。日本には八百万の神がいると言いますからその内の1人なのでしょう。1人で納得していると神様が私の方をジッと見ていることに気付きました。

「あの……どうしました?」

「いえ、お久しぶりだなと思いまして。あの日以来ですね。こうやって会話するのは」

「……ええ、そうですね」

 マスターに初めて召喚された夏のことです。私は一度だけ夢の中で神様と会っています。まぁ、会話らしい会話はしていません。一方的に消えると言われ、それについて質問してもただ笑っているだけで何も答えてくれませんでした。だからでしょうか。私はあまりこの神様を好きになれません。何を考えているかわかりませんから。

「そんな嫌そうな顔をしないでください、ゆかりさん。私は貴女のことが大好きなのですから。悲しくなってしまいます」

「よく言うよ。ゆかりさんを消したのはあんたの癖に」

 ニコニコと笑っている神様から私を庇うように前に出た先輩。とても頼りになります。

「いえいえ、ゆかりさんが消えたのは私のせいではありません。運命で決まっていたのです」

「ならその運命とやらを決めるのが神様なんじゃないのか?」

「そうですね……確かに運命を決められる神様もいると思います。ですが、残念ながら私には出来ません。ゆかりさんが消える運命にすることは、ですけど」

 それはまるで他の運命は変えられるような言い方でした。

「……はっきり聞く。何が目的だ?」

「目的、ですか? そうですね、貴方様に会いに来たとも言いますし。他のこととも言えますし。さてさてどれが正解なのでしょうか?」

「誤魔化さないで教えてくれたら嬉しいな」

「はい、貴方様!」

 マスターがお願いすると満面の笑みを浮かべて神様が頷きました。その顔は恋する乙女のようでした。

「はっきり言っちゃいます。私は恋神。恋を司る神様。ですが……とある禁忌を犯してしまったのです。そう――私は恋をしてしまったのです。神様が人間を好きになるなんてあり得ないことで、許されないこと。それなのに私は貴方様の勇姿を目の当たりにして恋に落ちてしまったのです」

 そう言いながら両手を胸の前で組み、微笑みました。その姿はとても神々しいと言いますか。まるで、絵画に描かれている女神のようでした。従妹も先輩も放心しているようです。

「……っつ」

 神様の姿を見ていると不意にマスターが頭を押さえます。あの動きは少し前まで繰り返し見せて来たものです。つまり――。

「ふふ、やっぱり通用しませんか。さすが貴方様。素敵ですよ」

「この頭痛の原因は……貴女だったのか」

 フラフラしながらマスターは神様を睨みます。その目はとても鋭いものでした。もし、私に向けられたものでしたら肩を振るわせて怯えてしまうでしょう。でも、神様はより一層顔を赤くしました。

「ああ、その目……私に向けられる日が来るなんて! 今日はとてもいい日です。記念日にしておきましょう。そうですね、『貴方様に睨まれた記念日』とでも名付けましょうか」

「いいから早く説明してよ」

「はい、貴方様!」

 本当にこの人、神様なのでしょうか。ただの変態と言われた方が納得出来てしまいます。

「どこから説明しましょうか。あ、そうですね。最初から答えを言った方がよさそうですね。貴方様はせっかちさんですから。ええ、そうしましょう」

 ニッコリと笑った神様は一呼吸置いて言いました。







「貴方様が巻き込まれた13年前と3年前の事件の原因は私です」







 ずっと探し求めていた答えを。

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