第二話:Ne:嫁からの恋愛相談
……生憎と、俺は恋愛に興味はあれど経験の方は全くないのである。
あまり多人数とは関わらない陰キャなので、中学までは縁がなかっただけである。
だから、恋愛相談というのも荷が重いもので。
さらに、リアルのことをあまりしなかったファウのものだ。責任は大きく伴ってくるだろう。
……さすがに厳しいだろうと、俺は断りの旨を伝えるためキーボードに指を置いた。
【男の子がされて嬉しいことを教えてくれるだけで良いです。こんなこと、セコンさん以外には頼めません】
しかしそれよりも早く、ファウがそんなメッセージを送ってきた。
そのメッセージは、責任を軽くするような用件と共に、心が揺らぐ言葉がある。
……ファウのリアルのことはまだ詳しくないが、確かにそれほど親しい存在は俺含めて珍しいのだろう。
それに、それで良いのか些か疑問ではあるがそれくらいなら容易いことである。
……それに、長年の付き合いであるあのファウの頼み事だ。俺の答えは、すぐに翻った。
【・・・僕で、良いなら】
サンプルになるのも用件についても承諾する形で、俺はそんなメッセージを送る。
すると、すぐに青髪美少女の頭上から吹き出しがでてきて、ログに新たなメッセージが表示される。
【セコンさんがいいんです！ありがとうございます(❁´ω`❁)】
そのメッセージを見て、俺はなんだかほっとしたような気分になった。
苦手な分野だが……やはりファウの頼みだ。頑張ろうじゃないか。
俺は口角を上げて、一つ意気込むのだった。
□
【そういえば、もしものことって？】
【セコンさんがガチで私に恋愛感情を抱いていたら・・・ってことですね】
【君は僕をなんだと思っているんだ・・・】
□
【これは訊いておきたいんだけど、その男の子は今のところフォウとどんな距離感になっているの？】
気を取り直して、俺は早速とファウにそう尋ねて見た。
''現状の距離感''
これを把握しなければ、親密になろうとしても返って迷惑を掛けてしまう。
やはり経験が皆無故に偉いことは言えないが、これは間違ってはいないはずだ。
ファウからの返信は早かった。
【どうでしょうか・・・毎日話してもらっていますが、スキンシップなどは少ないです】
なるほど。中々に親密な距離感には既に到達していたらしい。
しかし、スキンシップか……
詳しくは分からないが、少なくとも友達の域にはいると言えるのだろうか？
【やはり、スキンシップはした方が良いのでしょうか・・・セコンさんはどう思います？】
「えっ」
なんとも困るところで尋ねられて、俺はリアルでそんな素っ頓狂な声をあげた。
早くも経験の無さが足枷となっている。
……だが、幸い俺は親しい異性がいないわけでもなかった。
特に恋愛対象では無いが、仕方が無いし今回はあいつを当てはめて考えてみよう。
「………」
……イマイチ実感が沸いてこないが、色々なスキンシップをなんとか想像してみる。
その結果をファウに伝えるため、俺はキーボードの上に手を置いた。
【悪くは無いと思う。少なくとも、その関係と仮定して考えても僕は嫌ではなかった】
……送信して気がついたが、これを人に伝えるのは些か恥ずかしすぎるのだが。
だが、仕方がない……割り切るんだ、俺。
青髪美少女の頭上には、既に吹き出しが表示されていた。しかし、送信は少し遅い。
さすがにこの話題は恥ずかしいから、考え込んでいるのだろうか。気持ちは分かる。
しかしやがて、ファウからの返信がログに表示された。
【・・・頑張って見ようと思います。じゃあ、あと一つだけ。どんなスキンシップが良いでしょうか？】
そのメッセージを見て、俺は先程想像したスキンシップを恥ずかしながらも入力する。
正解かどうかはさておいて、無難なものだとは思うのだが、果たして……
【さっき想像したのは、手に触れたり、さりげなく体の距離を近付けたり、かな】
やっぱり恥ずかしいなコレ。自分でも気持ち悪く感じてきたのだが……？
一人勝手に悶え始める俺のことなどを他所に、ファウからの返信は早かった。
【なるほど・・・ありがとうございます！参考になりました('ω')】
【では、もう遅いですし私はもう落ちようかと思います】
案外好反応で俺は旨を撫で下ろすが、ファウの言う通り気づけばもう時間は遅い。
明日は俺も高校の入学式があるため、そろそろ寝る準備をしたくしなければ……
【じゃあ、僕も落ちるよ。頑張ってね、お疲れ様】
【はい！おつかれさまでした〜(・ω・)ノシ 】
ファウの返信を見て頬を緩ませながら、俺はログアウトしてパソコンの電源を切る。
前までも微笑ましかったが、異性と分かれば心の保養としてはさらに良いものだ。
「……本当に頑張れよ、ファウ」
そんな嫁に俺は応援の旨を呟くと、就寝支度をする為に部屋を後にしたのだった。
