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第十四話:Re:始まりの日 中編

「──はい、これで連絡は以上となります。じゃあ起立……礼!」


 始業式後のHRを終えて、担任の合図で俺たちは帰りの号令を済ます。

 少しして、静まり返っていた教室内が一気に騒がしくなる。


 まだクラスメイト間での緊張が残っているかと思っていたが、どうやら違ったらしい。

 グループなどはまだ確立していなさそうだが、皆すっかり打ち解けあったみたいだ。


 見れば二乃にのも、朝に見たクラスメイトとまた睦まじくやり取りしている。

 手元に今日は必要のないノートを見る限り、筆談で上手くコミュニケーションをとっているのだろう。


「……ん?」


 そんな様子に頬を緩ませていたら、二乃が微笑んで手招いて来てることに気づいた。

 よく見れば、二乃の周りにいるクラスメイトもこちらに笑いかけてきている。


 念の為に自分を指差して確認すると、二乃もクラスメイトも頷いて肯定した。

 ということなので、どうしたのかと首を傾げながら、俺は彼らの方へ近づいていく。


「二乃、どうしたんだ?」

「………」


 近づくなりそう尋ねると、二乃は集まるクラスメイトの一人に視線を向けた。

 彼はそれに感謝するかのように頷くと、人懐なつっこい微笑みを浮かべて口を開く。


「どーも如月きさらぎくん。俺のこと、わかる?」

「あ、ああ……つるぎ、だったよな」


 あまりにフランクなため少したじろいでしまったが、俺は彼の名前を口にした。


 剣六太(ろくた)。染めているように見えるパーマの茶髪が特徴的な、明るい雰囲気の青年。

 席が二乃の右隣だったし、恐らくそれで彼女と仲良くなったと推測できる。


 剣は俺の確認を聞くと、嬉しそうに頷いた。


「そうそう。でも、苗字で呼び合うのは堅苦かたくるしいし、気軽に竈○六太って呼んでよ」

「いや著作権!?」


 一言一句某家族の末っ子の名を、なに笑顔で言ってくれてるんだよ!?

 苗字のイメージと言い名と言い確かに連想したけど、そこを触れてはダメだろう!?


「お前は次に「ダメだこいつ……恐怖という言葉を知らない……!」と言う!」

「ダメだこいつ……恐怖という言葉を知らない……!──はっ!?」


 じゃなくてね?パロは著作権の問題があるし、なにより面白みに欠けるだろ?

 いや、確かにちょっとだけセリフを変化させて補正しているのはわかるけどさ?


 三助とは比べ物にならないボケの数に息を上げると、剣は愉快ゆかいげに笑う。

 こいつ……悪気もなさそうだが、いつか本当に消されるんじゃないか?


「ノリがいいなあ。もしよかったら、俺の一緒にピン芸人を目指さない?」

「遠慮します。ってかピンなのかよ」


 ──ってああもう!反射的にツッコんでしまって自分を制御出来ない……!

 狙ってもいない周りから笑いを取ってしまってるし、俺は頬を引きらせる。


「………♪」

「二乃も笑うなよ……」


 二乃はというと、声はでていないが口を手のひらで押さえて楽しげに笑っている。

 良い意味の笑みなのはわかるが、彼女に笑われるのはなんとも恥ずかしい……


 ……ただまあ、その笑顔を素敵なものであることなのには間違いない。

 剣に流されてではあるが、それを見られるのなら悪くないと思えた。


「ふふ……♣︎ピン芸人として成長した時のキミを……壊したい♥」

「まだ続けるの?というか、また漫画のパロを使うんじゃない……」


 前言撤回。剣のボケは、危ないです。

 こんなに著作権に怯える回は、今回だけにしてほしいな……



 □



「──というわけで」

「どういうわけで?」

「同じクラスとしてよろしくね。気軽に六太って呼んでくれると嬉しいよ」


 剣……改め六太は、人当たりの良い笑顔を浮かべながら手を差し出してきた。

 最初のやり取りで別の意味で怖いイメージがあったが、とりあえず俺はその手を取る。


「ああ、よろしく。俺も一樹かずきでいいけど、一体何の用で呼んだんだ?」


 例によって意識が逸れてしまっていたが、一応忘れてはいない。

 すると六太は、愉快げに笑った。


「そう警戒しないでよ。二乃さんの保護者である一樹くんと仲良くなりたいだけさ」

「………!?」


 六太のその言葉を聞いて、驚いていたのは俺ではなく二乃の方だった。

 子ども扱いみたいな言い方だろうが……あながち間違いではないような?


「………」

「おっと、ごめんって二乃さん。冗談に決まっているじゃあないか」


 だが、さすがに二乃も不服だったらしく、頬を膨らませて六太をにらんでいる。

 あまり見たことがない表情だ。失礼かもしれないが、可愛い、と思った。


 それにしても、まだ日はほとんど経っていないのに二人は大分仲良くなったようだ。

 二乃の幸福を願う俺に取っては、見る限りとても良いスタートだろう……


 ……それなのに、胸の中で嫌な感情が沸き上がるのはなぜだろうか。

 ……いや、気のせいだ。そうに違いな──


「あっ、一樹くんに勘違いされちゃ困るから言うけど、俺は保健医の先生に惚れてるから」

「え?あ、は……は!?」


 急に名前を呼ばれたかと思えば、なんの前触れなく六太が突然そう宣言したのだった。



 □



 なんだか六太くんには、彼と同様に弄ばれているような感じがします。


 今のところ悪い人ではないとは思うのですが、私と彼の関係に母さんみたいな反応をされると……


 ただ、六太くんも私のかずくんへのこの想いを……応援してくれているようです。


 ……だからって、そのカミングアウトは勢いに任せすぎだとは思いましたが。

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