二度目の異世界
……また来てしまった。
いや来たくて来ているわけではない、娯楽もないしまともな飯も食えない。
しかし異世界に来てしまったからにはあの約束を果たしてやらないといけないな。
「よくぞ来てくださいました、勇者様方」
聞き覚えのある、そしてもう聞くことのないと思っていた声が聞こえた。
ヴォルフガング・フォン・バイエル
このバイエル帝国の皇帝だ。
何度も勇者を召喚し、魔王からの侵略を防いできた帝国だそうだが、
魔王と対峙した俺なら分かる。
魔王は侵略などしていない
なので俺は魔王を討伐する気は無いし、一回目の時に約束をしていた。
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『…今回は討伐することを約束するが、もしもう一度召喚されたとしても討伐はしないぞ?』
『うむ、その時はもう一度召喚すればいいだけだからな』
『ならいいが…』
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…さて、落ち着いてきたところで装備の確認とステータスの確認だ。
装備は………魔王を討伐したときの装備のようだが、魔王討伐という偉業を成したことで神格化され、
名前の前に【神器】とついている。
ステータスを確認しようとした時…
「…む?そなたは先代の勇者に似ている、というか先代勇者ではないか?」
「…その観察眼は称賛するよ」
どうやら皇帝は俺の招待に気が付いたようだ。
…一緒に転移した3人は気絶している。まあ地力が違うので当たり前だが。
ちょうどいい、皇帝に提案してみるか。
「皇帝に進言したい、共に召喚されたこの三人に正体を教えないでもらいたい」
「…なんだ、そんなことか。その程度の事なら緘口令を敷けばいいだけだ」
「感謝する」
「魔王を討伐した先代勇者の頼みだ、国宝を求めるならまだしもこのくらいならな」
よかった、こいつらに正体はバレなさそうだ。
さて、装備がこれならアイテムボックスの中身も大丈夫そうだ。
「それでは、私は放浪の旅にでもでるとします」
「そうか、では旅の資金として1万Gほど渡しておこう」
「いや、金は一回目の旅で腐るほどあるからな」
俺は一回目の旅では飯、ポーション、防具の修理費くらいしかゴールドを使わなかった。
なので500万ゴールドほど余っているのだ。
「ふむ、1年で魔王を討伐した勇者がそれだけいうなら問題は無いだろう」
「ああ、それじゃ俺はもう行くぜ」
「うむ、そなたに神のご加護があらんことを」
そうして俺は、二度目の旅に出た