処刑台のある国3
少し考えれば分かることです。この国には治安の悪い時代もありましたし、もしかすると戦争をしたこともあったかもしれません。それなのに金属の弱点に気付かないということはありえないことです。つまり、全部嘘です。薪のことも含めて。貴族や学者を騙すにはあまりにも稚拙な嘘ですが、頭の足らない人達を騙すには十分でしょう。なぜ、このような回りくどい嘘をついたのか。その答えは、私の眼前の光景が示します。
死体だらけでした。頭に鈍器で殴られたような跡がある者。包丁が刺さったまま動かない者。あるいは、首から上が無い者もいました。この国は数十年に渡って平和を維持してきました。拷問と処刑によって。しかし私が身をもって処刑器具と兵隊さん達の武器が無力であることを示してしまい、今まで溜め込んできた不満がこのような形で噴出したのでしょう。処刑される心配なんてありませんからね。
しかし、それは嘘なのです。沢山の人殺しは駆けつけた兵士に殺され、話が違うと怖じ気づいた者達は捕縛されました。そして今、処刑器具が大活躍しています。見たかった光景を、ようやく目にすることができました。わたしは今、とても幸せです。