12人の魔女
久し振りの投稿です。個性豊かな魔女達のサバトをご覧ください(*´∀`)
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深夜0時を回った頃だった。東京都世田谷区の住宅街に、西洋の魔女を彷彿させるが如く漆黒のとんがり帽子、黒マント、黒のローブを身に纏いし女あり。歳の頃は、20代後半といったところだろう。令和の世に場違いな格好だった。いや、コスプレだと言えばなくはないか。住宅街の袋小路一角、そこにこの女の家はある。この女、ほぼ毎日この時間に帰宅する。で、最近、悩みの種が。3週間前から、家の前に犬の糞が毎日落ちているのである。昨日なんか、危うく踏むところだった。怒りのボルテージはMAX寸前!貼り紙もした。
ここで犬の糞をさせるな。犬の糞は飼い主の責任です。
が、よくこんな場所を見つけたものだとある意味感心する。いや、これは動物の方が飼い主を誘導している方だろうと思う。郵便局などの配達員を困らせるほど見つけにくい場所に、この家はあるのだから。
満月の夜、魔道に身をやつし者の集いあり。その集いをサバトと言う。この世に魔女なんて・・いるんです、ひっそりと。世界中、裏社会・・これでは犯罪になるので裏世界とでもいいましょうか。そこから現世と関わりを持ち彼女達は、生活してるのです。東京にも、勿の論いますとも。世田谷区在住の魔女のサバト、世田谷の人口約94万人に対し、魔女の数は12人。魔女がいない区もあるし、一人のみで、サバトができない区もある。因みに東京都全域では、魔女人口36人。日本全国では88人。そんな中で、世田谷区は、突出していると言えよう。普段、仕事をしている魔女もいる。なのでサバトは、毎日、22時に始まり、0時に閉会。それが、世田谷区サバトの決まりごと。過半数以上の出席でサバトは成り立つ。強制はしていないが、この世田谷サバト、ほぼ毎日全員参加している。メンバーは、本名で呼び会うことはしない。リーダーは、一月の君と言う呼称、以降、十二月の君まで、呼称がつく。因みに、先に登場した魔女は、十一月の君。サバトでは、他愛もない話しから、人生相談、魔術論まで、なんでもありだ。同時に持ち寄りの物で楽しいお茶会も兼ねており、ご自慢の手料理を披露など賑わいを見せている。この世田谷サバト、会合は、リーダーの一月の君邸で行われ、幹事が持ち回りで開催する。幹事はカレンダーの月の君。今、月は九月なので、九月の君が幹事役だ。そ~れでは、み~なさ~ん、サバトを始めましょ~う。黄色のローブを着衣した、少したれめの九月の君の発声でサバトは始まった。
今日は、なんの話にしようかしら
と、純白のローブを身に纏う一月の君。気の優しい白髪のお婆ちゃんといった印象を受ける。巨大な屋久杉を使用したテーブル。そこに魔女達は腰かけており、ハーブティー、スポンジケーキ、マカロンなどのスィーツも置かれ、香りだけで癒される。
それでしたら・・十一月の君が挙手をする。どうぞ、と一月の君。お茶の席でなんですがと前置きして語る内容は、例の犬の件だ。聞けば、頭に来て呪い殺そうかと思っているらしい。『さすが、十一月の君。物騒ね・・』褐色の肌に巨乳、青のローブ、七月の君がチーズケーキを口にし、心で思う。連日犬の糞が家の前に落ちている屈辱感。
貼り紙も全く効果がないんですよ!3週間!飼い主、馬鹿か!糞野郎!分かりますぅ?!
はぁ、はぁ、十一月の君は、語気を強め興奮状態になってきた。あら、あら、十一月の君、少しハーブティーでもお飲みになって。終止笑顔、グレーのローブ、十二月の君がたしなめる。すいません・・勧められるまま、十一月の君はティーカップを口元へ。今日のハーブティーは、黄緑色のローブ、ふくよかな体系、料理大好き、三月の君がたててくれた。世田谷サバトの中で、とりわけ三月の君、深紅のローブ、薬草マニア、八月の君のハーブティーは、評判がいい。
すみません、落ち着きます。
十一月の君が口にしたハーブティー。レモングラスとホワイトセージ、カモミール、それにトウキ。それらが融合し、口の中に芳醇な香りが広がる。気持ちいい、心地いい。負に満ちようとしていた心が安らいできた。
人を呪殺する場合、世田谷サバト内では、満場一致の許可がいる。メンバー内に人を殺す行為をしてほしくないからだ。暗黒魔道は、使用し慣れれば慣れるほど、良心の呵責が無くなる。実際、他国において呪殺により1万人殺した魔女が国際手配中になっていた。ぼそぼそと聞き取れない声で十月の君が語る。見た目、眉毛の濃いくりくりした目の子どもである。紫色のローブ、身長136センチの短髪の魔女だ。あら~ん、可愛いわ~ん。こころちゃ、んんっ!、十月の君。十月の君が顔を赤らめ頬を膨らまし、九月の君をポカポカ叩く。ごめ~ん、つい、可愛くって名前を言ってしまったの~。叩かれながらも、九月の君は楽しそうだ。魔女は見た目で年齢を判断できない。十月の君は、子どものようで235歳であり、九月の君は、見た目30代だが、96歳だ。世田谷サバトで最高齢は、一月の君で460歳。なんと、関ヶ原の合戦を知っている。秘密にしているが、夫だったその人は、石田光成の配下で世に名を広めた島左近勝猛である。で、十月の君は何と言っているのだ?紫色の輝く長髪、切れ長の目、シャープに尖った鼻。男装したら世の女性は一ころという美麗な容姿、茜色のローブ、五月の君だ。はいは~い。あのですねぇ〜、殺さない程度なら、いいんじゃないの〜、ですよ。呪いの分野では第一人者、十月の君の意見なら、となった。顔に木彫りの道化仮面をつけ、桃色のローブ、四月の君は、サバトが始まると早々に食べて、飲んで満足して眠りこけているので放置。堅物眼鏡、銀色ローブ、二月の君も十月の君に同意。海外で仕事中、クリーム色のローブ、六月の君は欠席だ。身長191センチもあり、容姿端麗、トップモデルであり、女優でもある。
では、十一月の君、呪いはほどほど、と言うことで。できれば、我慢してほしいのだけれど。一月の君が、総論をくだす。分かりました、出来る限りの努力はいたしますので。十一月の君は、皆に聞いてもらい、気が晴れた。世田谷サバトの中で一番若く、短気である。まだまだ、諸先輩からの指導助言が必要だと思っていた。
では、本日のサバトは閉会いたします。
一月の君の挨拶で、サバトは閉会。みなさ~ん、六月の君以外で明日のサバトを欠席される方いらっしゃいますぅ~。九月の君が手を振る。幹事は毎日閉会後に、次のサバトの確認をするのだ。大丈夫、だ、です、言い方は違えど、皆大丈夫のようだ。四月の君を除いて。ちょっと、起きなさい!二月の君は、いつのまにか、四月の君を起こす係りになっている。ん~、終わりぃ〜?四月の君は欠伸をし、背伸びをする。さぁ、帰りますよ!ホントに貴方は毎日毎日、世話が焼けますね!『助かるわ~・・』皆、四月の君の奔放さには、正直手を焼いている。この委員長のような性格!二月の君の存在は、有りがたい。あっ、九月の君、自分、明日も参加っす。二月の君に急かされながら、四月の君はサバトを後にした。皆、銘々の手段で家路に向かう。大体は定番のホウキに乗り空を飛ぶ、だが、四月の君のように創作魔法を使う者もいる。型どった物を動かす魔法、ゴーレムの原理と同じである。四月の君は、粘土でペガサスを作り、魔法で動かしている。それに二月の君を乗せて空を飛び、家まで送る。なんだかんだで、二月の君は好きらしい。
皆を見送ると、一月の君は扉を閉めた。すると不思議なことに、今まであったレンガ造りの古めかしい家は消え、そこには五階建てのビルが立っていた。
十一月の君は、家の近くにある公園に降り立つ。ホウキは魔法で小さくし、ショルダーバッグにしまう。家までは100メートルほど、徒歩で歩く。途中、スマホに着信が入り歩きスマホに。現世での友達、会社の同僚からだ。他愛ない話をしながら、家の前に着くと、グチャっと足元から音、感触が。十一月の君が足元に目をやると、犬の糞。ついに踏んでしまった。同時にプチン!十一月の君の何かが切れた。『皆さん、すいません。我慢できませんです。』呪いの準備を・・死なない程度に・・靴裏に付いた糞を地面に擦り付け、ブチ切れた十一月の君は、家の中へ姿を消した。