11話
「おおぉぉぉおおおお!すごい!ねぇ見て見て!!すっごいよ!!!」
山奥......ってほどではないけどほどよい山の中にある旅館に私達は来てた。
もちろんこんな所に公共交通機関なんて使ってたら疲れるだけだから今日は紗耶香さんと栞里さんが交代して運転してくれた。
うん。私はまだ免許は持ってないから仕方ないんだ............。だけど、栞里さんの運転だけはもうやめてほしい。
何か......何か違うんだ。ちゃんと車を運転してるのに何かが毎回おきそうなんだ。なんというか、車の運転にも栞里さんの落ち着きのなさが表れてたね.......うん。
まぁ事故なく来れたので良しとする!!
それよりも今は目の前にある旅館!!!
こんなところに来ることじたい初めてだからテンション爆上がり中!!!!!!!!
「どう陽凪ちゃん?」
「何か....何か良い!!!!」
「ここは温泉もあるし、何よりもご飯が美味しい!!早く行ってとりあえず温泉に入って疲れをとるぞ!!!」
「それ賛成!!栞里さんの運転がすっっっっっっっっっっごく不安で余計に疲れたから!!」
「言ったなこの未成年!!!運転がどれだけ難しいか教えてやろうか!!」
「私未成年なんで車運転できませーんだ!」
「このっ.......!!」
ヤバイ逃げろおちょくりすぎた!!!これは絶対報復待ったなしじゃん!!
「待て!!私に癒しを提供しろ!!そしたら許してやるぞ!!!!」
「誰が捕まるか!!私にとってはただの苦痛なんだよ!!!!!」
誰がこんな素敵な場所にまで来て好き好んでおもちゃにされなきゃいけないんだよ!!!断固拒否する!!!!
「はいはい2人とも。もうそろそろ中に入るから暴れないのー」
「「はーい」」
..............ん?もしかして今ナチュラルに紗耶香さんに子ども扱いされなかった???
――――――
ふーっ。良いお湯だった。
源泉かけ流し?ってやつだったらしい。細かいことはよく分かんないけど、少なくともいつも入ってるお風呂よりかはなんかすごかった。
温泉の色とか匂いとか色々すごかった!!!
..............ただやっぱりあの2人は許せない。
持たざる者の痛みを知らない2人は許せない。1人はいつものことかって感じで流してくるくせに微妙に主張してきやがるし、もう1人はあからさまにやってきやがる。
他の人もいる中で私がヤバイ奴だって思われないように睨むだけにしといたけど、3人だけなら絶対もいでた。うん、その自信しかない。
「なっはっはっはっはー!紗耶香がいつも言ってることわかった気がする!!陽凪ちゃんをつつくと可愛いってこういうことか!!あの嫉妬の目!やるせない感情!!どれもが素晴らしいね!!!!!」
うるさい。
旅館に備え付けられた浴衣を着せさせられて私は今不機嫌なんだよ。
「まーまー陽凪ちゃん。これから美味しいご飯でも食べてリフレッシュしよ?」
何を言っているか元凶その2。日々の生活ではむしろ貴女にやられてますけど!?!?!?
「お風呂から上がりタイミングでご飯を用意してもらってるからすぐに食べれると思うよ??」
うんその通りだった。
部屋に戻るともう夜ご飯が揃ってた。
1人1杯の大きなカニがメインのご飯!!!
しかもこれ自分で剥いて食べるやつだ!!!!!
「陽凪ちゃんカニ食べたことある?」
「ない!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「なるほど.......じゃあとりあえず私の真似してみて?まず足を取って......」
ふむふむ.....この足を取って、ハサミで切れば良いんだな???
............何これ美味しいんだけど!?!?!?
なんか美味しい!!食べたことない!!!!!これ私好きだ!!!!!
そしてどうでも良いことに気づいたけど、カニ食べた後にカニカマの味を思い出すと、結構カニカマってカニの味を再現してるんだなーって思う。
そんなどうでも良いことは置いといて私は今!目の前にあるカニを食べなければ!!!!!
ーーーーーーー
side 紗耶香
陽凪ちゃんが一心不乱にカニを食べてる隣で私と栞里は日本酒片手にゆっくり食べてる。
疲れてるから多分酔いはすぐにくるだろうけど、カニと日本酒っていうコンボがとても美味しい。
それにこのカニって冷凍されてるわけじゃないからなお美味しい。
「栞里?ちょっとカニの足一本陽凪ちゃんにあげてくれない?私もあげるからさ」
「いいよー」
そう言って私達は陽凪ちゃんにバレないようにカニの足を置く。
ふふふっ、本当に美味しいんだね。さっきから一言も喋らずにずっと食べてる。
「来てよかったねー紗耶香」
「うん。ありがとう栞里」
お礼に空いたお猪口に日本酒を注ぐ。
こうして2人で飲むのって結構久しぶりなんだよなー。今日は良い感じに酔えそう。
ゆっくりカニを食べながら日本酒を飲んで、お刺身を食べながら日本酒を飲んでたらいつのまにか陽凪ちゃんは食べ終わったらしい。
しかもお腹いっぱいになって眠くなったのかもう寝かけてる。
「とりあえずは座布団の上に寝かせるか」
「そうだね」
余ってた座布団を何枚か並べてその上に陽凪ちゃんをのせる。
「紗耶香今日はどうだった?」
「すっごく楽しかった。連れてきてくれてありがとう栞里」
「全然大丈夫。大切な親友の妹とその恋人なんだから」
「...............陽凪ちゃんにとって良い思い出になったかな?」
「なったと思うよ。ただ私としては陽凪ちゃんが旅行に行ったことがないことにびっくりしたよ」
うんその通り。陽凪ちゃんは修学旅行にさえ行ったことがないらしい。
「小学校の時は病気。中学校の時は陽凪ちゃんがちょうど荒れてた時で行く気すらなかったんだって」
「...............これぐらいならいつでも連れてきてあげるのにね」
「そうだね」
陽凪ちゃんが思い出を欲しがるのって多分こうやって家族で一緒にどこかに行ったっていう思い出があんまりないからなのかな???
うん。これからは時間が許す限りは私がいろんなところに連れてってあげよう。
次は北海道でも良いし沖縄でも良いねー。
どこ行っても楽しいだろーなー。
そう考えながらも私は栞里と思い出話トークをする。
「...........私達もそろそろ寝る?」
おっと危ない。あやうく思い出話だけで夜が明けちゃう。
布団はこうやって引いて、完成!!
真ん中に陽凪ちゃん、陽凪ちゃんを挟むように私と栞里が寝る。
一応布団は3枚を横に繋げてるけど、実際に使ってるスペースは陽凪ちゃんがいるところと私と栞里が本当は寝る場所だったはずの布団の半分くらい。
これでもかってくらい密着してる。
........これも良い思い出になれば良いなー。
そう言って私は正面から、栞里は後ろから陽凪ちゃんを抱きしめて寝る。
時々陽凪ちゃんは今でも精神年齢が落ちる日があるから態度で示さなきゃいけない。
私達は陽凪ちゃんをここまで愛してるんだよーって。
.....................明日の反応が楽しみだな。




