36話
遅れてすみません!!
side美咲
「んっ.............。」
「陽凪?」
「.........んっんーー。.........ん?..........あれ?ここ、どこ?」
「陽凪!良かった.......やっと目を覚ましたかよこのバカ」
「.................そっか。私死ねなかったんだ」
「そうだよこのバカ。もう2度とこんなことすんなよ」
「そうよ陽凪ちゃん。もうこんなことしないでちょうだい」
「あれ?おばさんだ。............ねぇ美咲これってさ私もしかして説教フラグたっちゃってる?」
「フラグじゃねぇよ。母さんからの説教は確定事項だよ。ついでに私かもな」
「そうよ陽凪ちゃん。時間はたっぷりあるんだから覚悟しときなさいよ?」
「.......................美咲逃げ道は?」
「あると思うか?」
「ですよねー」
いまさら逃げ道探そうと意味ねぇよ。私も母さんも紗耶香さんもお前を離す気はないんだから。
陽凪が入院した時点でお前はもう詰んでるんだよ。だからおとなしく私と母さんに怒られろ。
「それじゃ陽凪ちゃん、私は一旦席を外すわ。しばらくは若い子達同士でお話なさい。うちの娘があなたに言いたいことがあるらしいから」
「そ、それじゃおばさんからの説教は?」
「もちろん..........あるに決まってるでしょ?楽しみは後に取っておいてこその楽しみでしょ?」
「...........私にとっては地獄なんですが」
「そんなの知らないわよ。じゃあ美咲後よろしく」
「ほいほーい」
ありがとう母さん。こうやって2人で話せる空間作ってくれて。
「.............さて陽凪。私が言いたいことが分かるか?」
「なんとなく」
「じゃあ予想はついてそうだけど、あんたが何でリスカをしたのか理由を聞こうか」
「やだ」
「どうしてもか?」
「あたりまえでしょ?」
「........そんなに私のことが信用できないか?私はそんなに頼りないのか?」
「そんなことない!!..........あの時言われたこと憶えてるよ。あの時もいったけどほんとにすっごく嬉しかった。大切な友達だって家族だってこんな捻くれた私に真正面から言ってくれて嬉しかった。だから言えない。この気持ちを伝えることだけはできない」
なんだよその気持ちって。その気持ちのせいであんたはリスカしたんじゃないの?1人で抱えきれないほどの何かを抱え込んだからこそバカな真似をしたんじゃないか。
「...........なんでだよ?捻くれてたって陽凪は陽凪なんだよ。私なら陽凪を受け止められる」
「................................そんなこと言っていいの?バカな私は本気にするよ?」
「そんなもんドンとこい。何年あんたと友達やってるんだと思うんだよ。このくらいのことでへこたれるわけないだろ?」
「..........分かった。ならなんで私がリスカをしようと考えたかだけは話す。もちろんこれはおばさんにも話すつもり」
「.........まぁそれだけで聞ければいいか。で、なんでリスカしようとしたんだ?私達を避けてたこととつながるのか?」
「まぁね。まず私が美咲と未空、紗耶香さんを避けた理由は嫌いになったとかじゃないから。むしろ好きだよ。好きだからこそ離れたの」
「................いや意味分かんねえ。嫌いになったから離れるのは分かる。でも好きだから離れるってどういうこだ?普通は逆だろ?」
「普通はね?............美咲思い出してみて。私ってどんな人?私の周りの人達はどんな人でどんな結末を迎えた?」
陽凪の周りの人って私に母さん、未空に紗耶香さんだろ。私が知る中で陽凪と特に仲良くしてるのはこの4人。でもどんな結末を迎えたってどういうことだ?結末........終わり...............もしかして沙那さんと陽凪のお母さんのことか?陽凪の周りの人で結末を迎えたのはこの2人だけ。っていうことは..........?
「.............結末を迎えったって陽凪もしかして沙那さんとあんたのお母さんのこと?」
「そうだよ。沙那ねぇとお母さん。私の大切な家族。血のつながった唯一の家族」
「....................亡くなってるな。2人とも」
「そう。それも病気と事故で私は大好きな家族を失ったの。..............もう分かったでしょ?私の近くにいるだけで不幸が訪れるって」
「...........は?」
「私が近くにいたからアイツは狂って沙那ねぇに手を出しやがった。私を人質にして沙那ねぇを穢して私と沙那ねぇに消えることのない傷をつけやがった。私がいたせいでお母さんは過労で倒れて、それが原因で病気になって死んじゃった。私がいたせいで沙那ねぇは車に轢かれて死んだ」
「................。」
「全部全部私が悪いんだよ。私がいたからお母さんも沙那ねぇも傷ついて死んじゃった。だからね私思ったんだ。私が消えれば全部解決するんじゃないかって。こんな私を好きって言ってくれる美咲を、こんな私でも友達って言ってくれる未空を、こんな私を気にかけてくれるおばさんを、そしてこんな私を愛してくれる紗耶香さんをお母さんや沙那ねぇみたいにしたくないから、私という存在を消せばもう誰も不幸にしないはず。だから私はリスカをしたんだよ。..........まぁ結果は失敗したんだけどね」
「..............陽凪の意志はどうなるんだよ?お前は生きたくないのかよ」
「私の意志?.........もちろん死にたいわけじゃないよ。でも私の命とみんなの命どっちが重いかって言われたらみんなの命でしょ?それに私の存在って害悪でしょ?ならなおさらだよね?」
「...........ふざけんなよ」
「別にふざけてるつもりなんてないよ?こっちは大真面目で言ってるんだから」
「...........そうかよ。じゃあこっちも遠慮なく言わせてもらうけど、陽凪今まで私達と過ごした時間は楽しくなかったのか?」
「...................そりゃ楽しかったよ。逆に楽しくないわけないじゃない」
「ならなんで自分から消えるなんて言うんだよ!生きたいなら生きればいいだろ!!いろんな事して楽しめばいいだろ!なのになんでそんな悲しいこと言うんだよ!!」
「だって私が近くにいるだけでみんなを傷つけるんだよ!!そんなの耐えられるわけないじゃない!私の目の前でまたみんなが消えるんだよ!!私に幸せだった時の記憶だけを残してみんな私を置いていくんだよ!!もうそんなの嫌!!そんなの見せられるくらいなら私が死んでみんなを守れたらそれでいいの!!!」
「なんだよ!結局ワガママかよ!!」
「ワガママで悪かったわね!!!」
「悪くねえよ!!陽凪あんたは本音を言わなさすぎる!!私を置いていくだぁ!?あんたが死んで置いて行かれるのは私達も一緒なんだよ!!だったらこうやって本音をさらけだして喧嘩した方がよっぽどマシだろ!!」
「どういうことよ!!」
「..............いいか?陽凪は置いて行かれるのが嫌だって言ったよな。それは私だって同じだよ。私だって陽凪に置いて行かれたら悲しい。だから普通に暮らそうぜ?一緒に笑って騒いでバカして、そんで怒られたり泣いたりしようぜ?そしたら全部解決するさ」
「でも、私が近くにいたら.............」
「陽凪がいないと楽しいものも楽しくないんだよ。それに疫病神がなんだよ?私はそんなの信じないしどうでもいい。もし陽凪が疫病神だとしても関係ねえ。私は私のしたいようにするだけさ」
「でもでもそのせいで美咲が.........」
「なったらなったらだよ。もしそうなっても悔いなんてねえから大丈夫」
「そしたらまた私独りになるんだよ........?」
「あのな陽凪。人間いつかは死ぬんだよ。結局は誰かを置いて死ぬんだよ。それが早いか遅いかだから我慢するしかないんだよ。我慢して我慢して、誰か違う人と楽しい思い出を作っていく。そして時々死んだ人との思い出を思い出して懐かしいなって笑ったり悲しんだりする。これが人生ってやつだよ。だから大丈夫だよ」
「................大丈夫じゃないって言ったら?」
「それならその答えは1つだよ..........................私が一緒に死んでやるよ。最初に陽凪を殺してそのあと私も追いかける。それなら寂しくないだろ?」
「............あはは、何よそれ。それってさもし私がこの場で死んだらどうするの?」
「もちろん追いかけてやるよ。でもな陽凪が死ぬってことは私も死ぬってことだよ。私を死なせたくなかったら頑張って生きてくれよ?」
「......................................................そんなこと言われると私本気にするよ?それ信じちゃうよ?」
「おう信じとけ。私は陽凪を裏切らないからな。ま、でも私も死にたいわけじゃないし普通に暮らしましょうや?普通に高校卒業して、大学行って、就職して生きましょうや?」
できるだけ笑顔で言うことを意識する。私にとってそれが当たり前であるように...........。陽凪を死なせないようにするためにはこうするしかないんだから頑張って押し切れ私!!
..............まぁでも今まで言ったことは仕方なく言ったことじゃない。陽凪ならそうしてやってもいいって思ったからここまで言えたんだよ。
「.....................私が死んだら美咲も死ぬのは嫌だから私もうこんなことしないよ。ふふふっ、それにしても美咲がこんなこと言うなんてねなんか面白い」
クスクス笑いやがって.........。人がどんな思いでここまでのこと言ってんのか分かってるのかよ?
「あのなぁ..........人がこうやって友達の自殺を止めてるんだからそう笑うなよ。めっちゃ緊張したんだよ」
「あーあ..............そっか。私は独りにはもうならないんだよね?」
「そうだよ。昔から言ってるけど私があんたを独りにはさせない」
「................ありがとう」
「陽凪の友達するならこれくらいはできないとな?」
「何よ?私が重い女だって言ってるわけ?」
「違うぞ?重い女じゃなくて重すぎる女だよ。私じゃなきゃ付き合えきれんぞ?」
「別にそれでもいいもん」
「もんって子供かよ..........」
「だって..............」
「だって?」
「美咲がずっと側にいてくれるんでしょ?ならそれだけ私は十分だから」
はぁ...........なんでそんなこと言えるんだろうな?恥ずかしくないのかよ............。聞いてる私の方が恥ずかしいってどういうことだよ。
「美咲が顔真っ赤にしてるー。なになに?恥ずかしいの?いまさら恥ずかしくなったの?」
「..............そうだよ!恥ずかしがって悪いかよ!!」
「全然。だって私だって恥ずかしいんだから」
「........ならいうなよ」
「無理。言いたかったから言っただけ。美咲の前では我慢することはもうやめたからいいでしょ?だから覚悟しといてよ?私って結構重いからね?」
「分かった分かった。重いことはもう知ってるよ。それに陽凪のこと全部受け止めてやるって言っちまったからもう覚悟はしてるよ」
そうだよ。こっちはこうなった時からもう全部覚悟してんだよ。
陽凪が生きていられるように私が楔となれるようにな。まっ、でも陽凪がいないと楽しいもんも退屈に感じるのは事実だし、何より私が陽凪と一緒にいたいって思ってるからそれぐらいのことどうってことないよ。
「それじゃもうこの話は終わりだよ。2度と自殺なんて考えるなよ?」
「分かりましたよー」
「それじゃ母さんを呼ぶか。................説教してもらわないといけないからな」
「げっ!!忘れてた!!!!」
「私は忘れてなかったからな!」
「..............助けては?」
「助けるなんてありえねえよ。母さんにこってりと絞られてこい」
「................仕方ないか。あーあ怒られるのいつぶりだろ?」
「まぁ3年ぶりってところじゃないか?陽凪が思いっきり殴られた時以来じゃないか?」
「うわぁ.....あの時結構怒られたからなぁ」
「多分今回はそん時以上に怒られるから覚悟しておけよ?」
「...................やっぱりいまから「自殺するなんて言ったら死ぬよりも痛い目みせてやるからな」うん!謝っとく!!今からちゃんと謝ります!!!」
はぁ.........懲りねえなこいつも。
でもそれが陽凪だから仕方ないか。私がちゃんと制御すればいいだけだもんな。
我ながらなんでこんなめんどくさくて重いやつのことを友達って思ったんだろうな。............それにさっきの私の発言は確実に告白に近いものだし思い出すだけで恥ずかしい。
恥ずかしいから陽凪にあたってもいいよな?私達にこんなにも迷惑をかけたんだから許されるだろう?
...............................そういえば紗耶香さんになんて言おう。さすがに陽凪に告白しましたなんて言えないし。
なんでこんなにも問題が積み重なっていくんだよ。やっぱり全部陽凪のせいだ。陽凪が変なことするから私はこんな目にあってるのか..............。
ならお代をもらわないとな?
私と陽凪、そして母さんや紗耶香さん未空との楽しい思い出っていう高いお代をな?
重い!重すぎるよ!!なんでこんな重い話になった!?もっとほのぼのとしたもの書きたかったのになぜか重い方向に向かってしまう!!
 




