2話
「陽凪もう授業終わったよ?いつまで寝てんだ、よ!」
「いたーー!私が何したっていうのさ!!美咲!!」
「7限から帰りのHRまで寝通すアホがいたからだよ」
「アホってなによ!!政経の時間は睡眠時間でしょ?だから大丈夫!!」
「どこがだよ!!」
せっかく人が気持ちよく寝てたっていうのに政経の教科書でぶん殴るのはひどくない!!
「それに人を殴っちゃいけないって小学校で習ったでしょ!!」
「教科書の角で殴らなかっただけ慈悲だと思え」
「ひどっ!?」
たしかにあんまり痛くなかったけどそれでもじゃない。
「で、最近どうなんだよ?」
「最近?」
「ちゃんと寝れてるかってことだよ」
「そりゃばっちりと」
1日7時間たっぷりと寝てますよ?
「だってもうそろそろで2年だろ?あんたまだ吹っ切れてないんだから無理すんなよ」
「.........................うん」
だってしかたないじゃん。吹っ切れないもんは吹っ切れないもん。お姉ちゃんがいなくなったんだってまだ信じたくはないんだから。
「私で良かったら力になるからいつでも言えよ」
「うん。...............早速なんだけど古典教えてくれない?もう全てが分からん」
「............こっんのー!!バカ!!」
「いたっ!?」
ゴンって音が響くくらい叩く必要なくない!?しかも今度は角だし!!
――――――
家まで帰ってきたけどまだ若干頭が痛い.........。これ絶対たんこぶになってるよね?最後の一撃は遠慮の欠片もなかった。
「あれ?鍵空いてる?」
そういえば今日の朝紗耶香さん何か言ってったっけ?早く帰るとも聞いてない気がする。さすがに泥棒とかじゃないだろうからやっぱり紗耶香さんだよね?
「ただいまー。紗耶香さん帰ってるー?」
家に入ると同時に聞いてみる。かすかに足音が聞こえるからやっぱり紗耶香さんだね。
「おかえり陽凪ちゃん!」
ニコっと笑いながら出迎えてくれる。もし私が男だったら絶対この笑顔で堕ちてる。だから私は女でよかったってしみじみと思う。
「ご飯もう少しでできるからとりあえずお風呂入ってきな?」
「はーい」
...........なんだろうこの紗耶香さんの新妻感。もう一緒に住んで2年たってるはずなのに全然変わらない。
そりゃ年齢的にもまだ若いけどね、こう全身からあふれ出るオーラがすっごいんだから。
――――――
「あがったよー」
お風呂で頭を確認してみたら膨れてたところがあったからやっぱりたんこぶになってる。たしか冷やしたらいいんだっけ?
「紗耶香さーんご飯食べる前に1つお願いしてもいい?」
「いいけどどうしたの?」
「ちょっとここ見てもらえませんかね?」
そう言って私は紗耶香さんにぶん殴られた所を見せるように少し頭を下げる。
「んー?............触ってもいい?」
「どうぞどうぞ」
「.............あら膨れてるね?どこかにぶつけたの?」
「いやちょっと教科書の角でゴツンっと一発やられました」
「え?それ誰がやったの?時と場合と人物によっては容赦しないよ?特に男だったら今からにでも殴りに行くよ?」
「まぁまぁ落ち着いて落ち着いて。紗耶香さんの可愛い顔がなんか怖くなってますよ?」
「大丈夫。私はちゃんと冷静だよ?だから犯人を教えなさい?」
いやその全ての人類を蔑むような顔を直してから言ってくれると助かります。
「そもそも男子は違うし、近づいてくる奴らは全員処すって決めてるしで大丈夫。で犯人は私の友達だから」
「そう。なら良かった」
..............ん?それだけ?仮にも義妹で女の私がたんこぶ作ったのにそれだけ?
「だって陽凪ちゃんのことだからまた授業サボったんでしょ?」
「今回はサボってない!!ちゃんと教室にいた!!ただ7限と帰りのHRの間ずっと寝てただけ!!」
「今回は?」
あっ.........ヤベ墓穴ほった。
「ちょっと陽凪ちゃん晩御飯は後にしてお姉さんとお話しましょうか」
「いえ..........サボったっていうのは言葉の綾というかなんというか...........」
「ひ・な・ぎ・ちゃ・ん?」
「...................はい」
もう地獄にいくしかないんだ。
紗耶香さん怒ったらさなねぇよりすっごい怖いから遠慮したいんだけどダメだよね?
はぁ..............晩御飯食べたいなぁ。




