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ゲイン  作者: 渡邊裕多郎
第五章
32/46

その1

       1




「おはようゲイン」


 翌朝、俺が二階の宿から降りて、一階の酒場に行ったら、ザルトがもう先にきていて、俺に声をかけてきた。しかも、もう飲んでいる。


「おはようザルト」


 俺はどうしてザルトが普段から獣化しているのか、理由がわかった。酒飲んで酔っ払ってるから変身を制御できていないのである。


「なんだ、また人間の姿に戻ってるのか」


「言っただろ。むやみに変身しても、周りが怖がるだけだからな」


「それで、今日はどうするんだ?」


「依頼をしてきた相手が報酬を持ってくるから、それを受けとって、あとは適当にぶらぶらするさ」


「そうか。そういえば、受けた依頼ってのは、でかいゴミ掃除だったのか?」


「人探しさ。ちっとばかし面倒くさかったけどな。成り行きで、エルフの組織をぶっ潰すことになった」


「相変わらず、笑えねえ冗談だな」


 相変わらず、ニヤつきながら言うザルトだった。


「それで、ぶっ潰されたエルフの一族は、何か恨みでも言ったきたか?」


「いや。これがドライなもんでな。組織のボスは娘を見捨てて逃亡。娘のほうも、親とは縁を切るって言ってたぜ。それで吸血鬼の王子様とお付き合いするってさ」


「へーえ。子供に聞かせてやったらおもしろがられるかもな」


「べつにおもしろくなんかない。ドラゴンと喧嘩になるし、槍を腹に突きさされたりして、死にそうな思いをしたぜ」


「ずいぶんとでかい話だな」


 酒を飲みながら、ザルトが少し考えるそぶりをした。


「そうだな。これからは俺も、それくらいでかく話を盛ってみるか。嘘も一〇〇並べれば、十や二十は誰かが信じるだろう」


「その辺は好きにしな。ただ、それでおかしなことになっても、俺は責任をとらないぞ」


「安心しろ。そんなことでガタガタ文句をつけるほど、このザルト様はケツの穴の小さい奴じゃねえよ」


「そりゃよかった」


 朝飯を食い終わって、暇潰しに壁に貼られた依頼書を眺めていたら、ミーザと、セイジュと、エルザがきた。


「ゲイン!」


 すっかり元気になったエルザが笑顔で俺の前まで駆けよってきた。少し遅れて、ミーザがやってくる。


「おいおい、あれ、大魔導師アーバンの娘のミーザだぜ」


「え、ミーザって、あれだろ? 都に直接雇われて、魔王の死骸を研究してるんだろ」


「冒険者じゃないのに、なんの用なんだ?」


 ほかの冒険者がヒソヒソ言いだした。まあ、そうなって当然か。


「あらためまして、今回は、本当にありがとうございました」


 ミーザが俺に礼を言った。


「私の母も、天国で喜んでくれていると思います」


「言っただろう。俺にとって、これは仕事だ。依頼があれば、俺は何度でも同じことをする。まあ、こんなこと、二度とあってほしくないけどな」


「おいおいゲイン」


 横からザルトが俺に声をかけてきた。なんか、ちょっと慌てた感じである。


「この人、大魔導師アーバンの娘のミーザさんだぞ。なんでおまえみたいなのが普通に話をしてるんだ?」


「この人、俺の仕事の依頼主なんだ」


「はあ?」


「はあって、それがどうかしたのか?」


「どうかしたのかって、おまえ、大魔導師アーバンの娘のミーザさんだぞ。なんで、こんなしけたギルドの冒険者が依頼を受けられるんだ。普通なら、正規軍だの騎士隊に声がかかるはずで」


「俺は前々から知り合いだったんだよ」


 短く説明して、俺はエルザにむきなおった。


「どうだった? お母さんのシチューは美味しかったか?」


「うん!」


 エルザが元気そうにうなずいた。ミーザがほほ笑む。


「どうでしょう? よろしければ、本日の昼食でも、どこかべつの店でご一緒に」


「へえ?」


 俺は驚いた。


「意外な申し出だな。俺はただの冒険者だぞ。あんたたちとは住む世界が違うと思ってたんだけどな」


 ミーザの笑顔は変わらなかった。


「かまいません。私たちはそんなことで差別などしませんので。それに、話したいこともあります」


「そういうことなら」


 べつに断る理由もない。あの街の吸血鬼やエルフたちとは違い、ミーザの言動に陰謀や隠しごとの気配は感じられないしな。俺は笑顔でうなずいた。

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