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悪役皇女は二度目だけど溺愛ENDに突入中  作者: 人参栽培農園
皇女やり直し編
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7話・魔力コントロールを大切に

 


 いい報告があります。


 一つ目は先日の話し合いについてです。


 実は父に啖呵切ったあの後、手紙が送られてきました。

 それ自体は悪い報告です。

 内容に処刑される日時が書いてあるかもと警戒心を募らせながら読んでみると、そんなことは一ミリも書かれておらず、先日のことを怒る様子も無かったのだ。

 書いてあるのはユーリ様が専属騎士になるにあたっての確認事項だけだった。


 ……てことはもしかして、父に啖呵切った件についてはお咎めなしってことでいいのかしら。


 ノアも含めた邸の人達にもこの手紙を見せて周り「お咎めなし」と確信するとその場でガッツポーズを決めたものだ。


 そして二つ目。ノアに関することです。


 翌日からノアも一緒に食事をとり、邸内を一通り案内すると驚くことの連発だった。


 テーブルマナーは完璧で、更に記憶力もいい為、一度教えたことは簡単に覚えてしまう。

 それに天才的なのは魔法だけではなかった。

 この世界の勢力状況や勉学にも長けていて、天才とはなんなのかということが分かる日々を送っていた。


 もちろん、最も天才なのは魔法分野についてだ。

 私も魔法についての本を読み漁りノアには劣るけどそれなりに魔法の知識を手に入れた。

 そしていよいよ、今日、初めて魔法を教えてもらうこととなったのだ!


「え?最初に<防御魔法>覚えるの?」

「ああ。ラヴィニアの城での扱い様を見たからには、この魔法が一番重要になるだろうし、今後もいざって時に使えれば役に立つはずだ」


 私的にはもっとかっこいい魔法を覚えてみたかったけど、それはまた後ほど……

 防御魔法を使えればいざって時にそれこそ処刑されそうになった時とか役に立つだろうし……よく考えたらこれ一番重要じゃん。


「ラヴィニアはまず魔法を使う前に自分の魔力の属性を理解するところから始めなくてはいけない。現段階ではどの魔法が会得できるかわからないからな」

「魔法はこの世界に存在する精霊から借りた力を人間が活用することによって生まれる力よね」

「その通りだ。じゃあ精霊の全属性を言ってみろ」

「えーと確か、<火><水><風><土><光>そして<闇>の六属性が基本で、魔法はそれらを応用して作られる」

「ああ。これからやるのは精霊との相性診断みたいなものだ。属性はあくまで基準だから、訓練すれば全属性を扱えるようになる。俺のように新しく魔法を作ることだってできなくは無い。まあ、聞くよりも体で覚える方がいいだろう」


 そう言ってノアは近くにある木に手を伸ばし「これがいいな」と呟き気の側面へ両手をつける。

 その木とほかの木の違いとは……


「──汝らの力、我とより濃く結びつくものよ。その姿を現し力を貸したまえ」


 するとノアの詠唱に応えるように触れていた部分から様々な現象が起こり始めた。

 木が燃えたり、根元から水が溢れてきたり、木に風で切り傷ができたり、土が盛り上がったり、突然光出したと思ったら木の影がうにょうにょと動き始めたり。

 属性によって違った効果が現れるらしく、これを使って自分の属性を確かめるのがノア先生流だという。


「今手本見せたから何となくわかると思うが、簡単に説明すると、木に自分の魔法のイメージを流し込むんだ。詠唱って言うのは精霊との会話だからな。当然相性もある。一応隣で待機しているからな」

「ええ」


 ノアと同じように両手を気につけ自分の魔法をイメージする。

 一呼吸置いてからゆっくりと口を開いて詠唱を始める。


「──汝らの力、我とより濃く結びつくもののよ。その姿を現し力を貸したまえ」


 目を閉じ自分の魔法のイメージつまり魔力を木へと注ぎ込む。

 その事に必死になって既に結果が出ている事に気づかなかった。

 足元にはかなり巨大な魔法陣が現れそれはもうめいっぱい光り輝いている。

 そしてその陣を風の扉として新たに生み出された風が天へと昇っていき、着ている服が風に揺らぎ始めた。


「バカ!力を押えろっ!」


 ノアの声で集中を切らした瞬間。


 ゴオオオオオッ!


「なっ……にが起きて──!?」


 流れが強くなり暴風とかした風が私ごと空へと舞いあがったのだ。

 最も高い位置まで到達したのだろう。ふと風が止み私は急速な落下を余儀なくされた。地面を見ないように背を下へ向けて足や手を折りたたみ体を縮こませる。


 何が起きたのか考える時間もないほど私の中では切羽詰まった状況だった。

 身体で風を切る音が先程から耳に入り込み恐怖心を更に仰いでいる。


 どうすればいいの、どうすれば……


 私は風の魔法が使える。

 そうよ、風だったら魔力コントロールすれば───


 もう一度目を瞑り今度は祈るように手と手を合わせて詠唱を唱える。


 ヒュオオオオオと落ちる音が激しく体を打ちつけた。


(大丈夫。さっきは力を貸してくれたのだからきっと大丈夫)


「──汝、その力を我の為に使いたまえ。これより汝の主たる我に空を謳歌する羽をさずけたまえ!」


 すると地面へ向けた背中の方から光で照らされ、覆われるような感覚が私を襲い、体がまるまる収まってしまうくらい大きな魔法陣が空中に浮かび上がる。


 手を握りしめたまま目を開けて周りを見渡すと落下スピードはとてつもなくゆっくりになっているのに気づく。


 体をぐるりと回転させて地面と垂直な形へと変える。

 そこはまだ地面からかなりかけはなれた遥か上空だと言うのにもう恐怖を与えなかった。

 恐怖心よりも今見えてる圧倒的な景色に目を奪われた。

 太陽で光る海、父のいる城に、探検に行った王都の城下町、更に遠くの森や街、全てが輝いて映る。



 十何年間も狭い箱の中で生きてきた私にはどれも尊くて、美しい世界に見えた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 それなりに長い間景色を眺め、足先と地面の距離があと数メートルという所まで降りてきた。


「ノアっ……!」


 着地する寸前、ノアに抱きとめらる形で無事空の旅を終えた。

 急に風の魔法陣を消したせいかバランスを崩してそのままノアの方へと倒れてしまった。

 ノアは私が怪我をしないように体を腕で包んで背中から倒れてしまったため、すごく痛々しい倒れ方になった。


「重い」

「私乙女なんですけど」


 女の子に重いは言ってはいけない。どこの世界でも共通の常識だ。

 これ以上罵倒が飛ぶ前にさっさと立ち上がろうとした。

 しかし、私を抱きしめる腕が一層強さを増して離してくれなかったので、仕方なくこのままの状態でノアが解放してくれるのを待っていると「はあ」とため息が聞こえてポツポツ声をもらし始めた。


「……焦った。魔力が暴走した時は本当に焦った。だいたいお前は自分の魔力量くらい把握して行動しろ! だからお前はいつまで経ってもバカでラヴィニアなんだよ!」

「いいじゃない、無事に魔力コントロールも覚えられたんだし……てゆうかバカでラヴィニアってどういう事よ! バカと私を並べて考えないで!」

「じゃあバカなラヴィニア」

「あのね、言い換えればいいって話じゃないのよ」


 後半はいつもの言い争いになったけど、すごく心配してくれているのはわかる。

 だからっていきなりお説教始めるのはどうかと思うけどね。無事に着陸出来たんだから褒めてくれても良くない?

 ノアの性格的に素直に褒めるなんてありえないだろうけど。


 私もここ数日、ただノアと一緒に居ただけでは無い。ノアの性格も大体リサーチ済みなのだ。

 例えば、すごく照れ屋で素直じゃない。だけど、私を大切に思ってくれていて、時々びっくりするほど過保護になる。

 あとは自信過剰の痛いヤツに見えるかもしれないけど、実は誰よりも努力家で八歳児だとなめられないように<変身魔法>を使って大きく見せているとか。

 本人はこの件に関してなにか言い訳していたけど、照れ隠しなので気にしない。


「素直じゃないわね~。心配してくれたならそう言ってくれればいいのに~」

「黙れこのポンコツ皇女。俺をバカにする暇があるならとっとと魔法を修得しやがれ」


 はーい、と元気なお返事。

 防御魔法程度、魔力コントロールをやり切った今の私なら簡単にマスターできるわ!






 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 盾を生成する特訓をしているはずのラヴィニアの周りの草花は所々焦げ付いたような痕や、水溜まりがあったり、木が縦に真っ二つに割れていたり、それはもう悲惨な状態であった。

 ラヴィニア自身も服はボロボロで髪もめちゃくちゃで、あれからたった数時間の修行とは思えないほどの乱れ具合であった。


 休憩後、修行を再開し言われた通り風属性の盾を作ったはいいものの……


「ほお。それなりに形にはなっているな」

「でしょ!魔力コントロールで形も自由自在よ!」

「ふっ。形には、だけどな」

「え?」


 さあーと血の気が引いていくのはノアが天に掲げた手のひらで炎を形成しているからだ。

 普通火は遊び半分で人に向けてはいけない。まだ向けられてはいないけれど、なんだろう、この後私がどうなるか手に取るようにわかる。


 バキンッ


「あああああ!私の盾がっ……!」

「やっぱり形だけだったな。形だけ良くても、相手の魔力量をしっかり見定めなければこんなふうに簡単に壊れてしまう。魔力コントロールができると言うならしっかり俺の攻撃を防いでみろよ」

「そ、そんな……スパルタ!鬼畜魔道士!」

「なんとでも言えばいい」

「………バカアホガキチビ自意識過剰のナルシスト自信家意地っ張り──

「そうですか、姫さんはそんなにスパルタ教育がお望みですか」


 いつもじゃ決して見られないような営業スマイルから始まるスパルタ教育。

 そこからは想像を絶する修行を強要された。

 ある時は火の玉を四方八方から同時に攻撃された。

 またある時は突然私の足元に現れた魔法陣によって暴風が巻き起こされた。


 拷問に近い修行を受け挫けそうになりながらも、私は無理矢理魔力を絞り出され盾を生成させられるのだった。




なるべく週二で投稿出来るように頑張ります!

次回は23日に投稿です。

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