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村への視察

あれから1年が経った。マリーはみるみる成長しなんと二足歩行できるまでになっていたのだ。しかし、いかんせん目が見えないのでこうして見ていないと何処かにぶつかってしまう。


コンコン


「あぅ」


俺がこうして指で音をたててやるとその音を頼りにこちらによちよちと歩いてくる。


「ぱぁー、ぱぁ!」


「だから俺はお前のパパではないと…、まぁいい好きに呼ぶがいい」


「ぱぁー、ぱぁ」


俺の足にくっ付くと、俺を見つけたのが余程嬉しいのか笑顔で離れようとしないのだ。


「マリオン様、定期報告の時間でございます」


「もうそんな時期か、分かったすぐ行く」


「ドラク、マリーを任せたぞ」


「ワゥ」


ドラクはマリーを咥えると大事そうに懐に潜り込ませた。最初はドラクも警戒していたが、今じゃすっかり我が子のように大事にしているな。これなら俺がいない時安心して任せられる。



「それでは定期報告をいたします。人間の国から譲渡されたレアメタルの鉱山ですが、我が眷属を向かわせ鉱石の採掘は順調に進んでいます。本来ならば全て奪ってしまうのが1番効率が良いのですが、今のところは資源には困っておりませんので、よしとします」


「それと、北の魔人ですが、結界を張って以降特に変わった動きは見られません、しかし何度か結界を破ろうとした形跡は見受けられます。引き続き警戒をしておくとしましょう」


「それから、森の近くの村ですが、協定により我らの領土となりましたが、人間の村など、マリオン様如何なさるおつもりで?」


「少し気になることがあってな、今日にでも視察に行くとしよう」


「分かりました、すぐに準備に取り掛かります。報告は以上です」


「マリオン様、本当に2人だけで大丈夫なのですか?」


「あぁ、ベールバティと俺だけで十分だ。それとも俺では人間に不覚をとるとでも言うか?」


「いえ、決してそのような事は、しかし、奴らがもしもマリオン様に無礼を働いたらと思うと」


「問題ない、それに我らは魔人で奴らは人間だ、多少の無礼は許そう」


「あぁ、なんと寛大なお方でしょうか!行ってらっしゃいませマリオン様」



イリスを連れていくと直ぐに殺したりしそうだから留守番を命じた訳だが、ベールバティも人間を玩具としか見ていない節はあるが、好き勝手暴れるという訳でもないし、最近人間にも興味を抱いている感じもする。まぁそれは俺もなのだが。


「あそこですね、えっと確かナバル村だっけ?既に僕達魔人の支配下に置かれたことは知ってるんですよねマリオン様」


「あぁ、そのように聞いている。だが…」


村の人間は此方への嫌悪感を滲ませつつ、まるで目を合わせようともしない。


「ふーん、にしては嫌われてるみたいね」


「仕方ないさ魔人の支配下に置かれるということは、奴隷になったも同然だからな」


「この化け物!!」


その声に顔を向けると人間の男の子供だろうか、木の棒を握りしめてこちらを見つめている。しかし、その手は震えており腰も引けているように見える。


「お、お前なんか俺が大きくなったら皆やっつけてやる!!」


「へぇー、面白い事言うねガキんちょ」


「あの子、魔人に、逆らったら殺されるわよ」


「あぁなんて事かしら」


周りからはそんな声が漏れている。


「ガキんちょじゃねぇ!!」


「人間の子供よ、そんな物でこの俺に立ち向かうか?」


「くぅ」


「さぁどうした掛かってこい、それとも今の言葉ははったりか?その様子だと大人になっても臆病者だろうなハハハ」


「くっそう!!」


子供は棒を振りかぶると一直線に向かってくる。しかし、その刹那ベールバティが尻尾で拘束する。


「はい残念、悪いけどマリオン様に何かしたら、イリスがグチグチうるさいんでね、遊びはおしまーい、子供は帰って寝ましょうね」


「なんだよ、お前の方がちっこいくせに!!」


「なんだと?僕をあんまり怒らせない方がいいよ?」


ギリギリ


「あ…う…」


ベールバティの尻尾に徐々に力が入っていく。


「お許しください魔人様、どうか息子を離してあげて下さいませ」


「許す?それはお前が決めることではない、僕が決めることだ。この僕を人間の分際でチビ扱いしたのはどうにも許し難いぞ」


「では、代わりに私を処罰して下さい、ですのでどうか息子だけは」


「は?なんでお前を代わりに殺さなきゃいけないんだ。僕は此奴にムカついてるんだ。お前も一緒に死にたいなら別だけど」


「どうか、どうかお慈悲を」


「離してやれベールバティ」


「はーい」


ベールバティは拘束を解くと子供は地面に倒れ込む。


「うぅ」


「力の無いものがいくら威勢をはったところで現状は変わらぬ、人間の子供よ悔しくば強くなるがいい、この俺に一撃を与えられる程にな」


「ありがとうございます、ありがとうございます」


「ベールバティよくあの子供を殺さなかったな、以前のお前なら容赦なく殺していたと思うが」


「やだなぁマリオン様、僕が人間の子供相手にムキになる訳ないじゃないですかぁ、それに人間の扱いはマリーと遊んでるから慣れたしね♪」


「お前も成長したのだな」


「からかってます?」


「いや、本心なのだが」


「それよりマリオン様この村に来た目的はなんです?」


「この俺の領土になったのだ、まずは俺の所有物の安全確保と思ってな」


「安全確保ですか?つまりこいつらを守ると」


「あぁ、俺の所有物になった以上、勝手に死なれては困るからな」


「なるほど、なるほど、じゃあ僕が人間達に説明しましょう」


「そうだな、任せる。それと少し調べて欲しいのだが…」


「さぁーさぁー人間の皆さん、聞いてくださいね今から大事なことを伝えるよー」


「一体何が始まるのだ」


「私たちどうなってしまうの」


ザワザワ


「この村は僕達、東の魔人が占領しました。よってこれからはこのマリオン様の所有物となります。マリオン様はこの村を守ると仰っています。なので、この村の脅威と判断したものは全て僕達が殺しましょう!」


「なんと、魔人が我らを?」


「信じられん」


「但し、この村から出ることは許しません、君たちは既にマリオン様の物ですから、それさえ守ってくれれば君たちの安全は保証しましょう」


「税金などはどうされるのです?我々は毎月王国に税金を納めておりました」


「これといった取り立てはせぬ、お前達は普段通り暮らすが良い」


「なんと、税金を払わなくてよいのですか」


「しかし、村から出られないと言うのは…」


ザワザワ


「たまにこうやって視察には来るがな」


「分かりましたかー?精々マリオン様を怒らせることのないようにね♪」


「ベールバティどうだ」


「うん、いたよ、あそこの端にいる青い目の女、あいつがきっとそうだよ」


金髪で青い目をした女はこちらと目が合うと、逸らしながらどこかへ去っていった。


「あの女がマリーの母親という事か」


「おそらくそうだよ、見た感じマリーと同じ感じがするし」


森にマリーが捨てられていたと聞いた時から、近くの村の人間の仕業と思っていたがやはりか、あの様子だと捨てた赤子の様子が気になっているのやもしれぬな。


「全く、勝手だよね自分で捨てといてさ、あの目、凄く気になっている奴の目だよ」


「そうだな、どちらにせよもうあれは俺のものだ。返すつもりもない、さて、そろそろ帰るか」


「はーい」

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