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マリオン様は気が気では無い

城に戻ると一息つく、久しぶりに体を動かすと予想以上に疲れるな。


「マリオン様、良ければ私めがマッサージを致しましょうか、全身をくまなくほぐして差し上げま」


「いや、いい」


「はぁん」


「ワゥ」


ドラクが何やらくわえてきた。


「あぅ」


「マリーか、異常は無かったようだな、ドラク偉いぞ」


「キャフゥ」


「ぱーぱー」


「ん?」


「ぱぁー、ぱぁ」


「パパ?パパと言ったか?」


マリーは俺の顔を確かめるようにペタペタと触りながらそう言った。目が見えない分、手触りで確認しているのだろうか。


「あぁん?パパですってぇぇ?」


ゴゴゴゴ


「マリオン様を下賎な人間ごときがパパなどと言うとは身の程をわきまえなさい!!」


「そうだな、俺は貴様の主ではあるが、パパなどではないぞ」


「ぱぁ、ぱぁ」


「ふむ、困ったな」


「何て事なの!?、私とマリオン様の間にできた愛の結晶にこそパパと呼ばせたかったのに!こんな捨て子に先を取られるなんてぇ!!」


ゴゴゴゴ


「ちょっとイリス、いちいち殺気を出さないでくれる?鬱陶しいったらありゃしないんだけど」


「貴方ね、この一大事になにをのんきなことを!!」


やれやれ、しかしイリスやベールバティも最近はあまり怒ったり笑ったりする事はしなかったが、マリーが来てからは少し変わったな。これはいい事かもしれない。


「お帰りなさいませマリオン様」


「ゼル、留守中何も無かったか?」


「はい、城内には羽虫1匹侵入はさせておりません」


「流石だな」


「お褒めのお言葉、この身に余る思いです」


「俺は部屋に戻る、少々疲れたしな、後のことは任せる」


「承知しました」




「全く、なんで私がこんな事しなくちゃいけないのかしら」


と言いつつマリーのおしめを替えるイリス。


「まーまー」


「私は貴方のママなどではありません」


「まーまー」


「違うと言ってるでしょ!!あんまり聞き分けのないようだとミンチにしますよ」


「まぁまぁ」


でも何故かしら、この胸にキュンと来る感情は、こんな下等生物ごときに、待てよこれは主人がペットに抱く感情と似ているわ、私も昔、飼っていた魔物グゲルガガの子供を飼育していた時こんな感情を感じたことがあるわ。


グゲルガガとは、凶暴なAランクの魔物の幼体で、目は1つしかなく、鋭い牙と角が特徴的な魔物で、頭を撫でるとキシェャャャっとおぞましい声をあげる。


「ねぇイリスそいつ僕にも遊ばせてよ」


「駄目よ、貴方すぐに壊しちゃうでしょ、これはマリオン様の大事なペットなのだから」


「そんな事しないよイリスじゃあるまいし」


「何ですって!」


「いいじゃん、ちょっと貸してよォ」


「仕方ありませんね、ちゃんとマリオン様に返すのですよ」


「はーい!!」


ベールバティは嬉しそうにマリーを抱えると空に掲げながらクルクルと回ってみせる。


「へぇーこれが人間の子供かぁ、小さいなぁ」


「あーいあーい!」


「楽しいのか?それじゃこれならどうだ」


ベールバティは上空へ飛び上がる。


「どうだ、いい眺めだろ、そういやお前目が見えないんだったな」


「あーいあーい!」


「そうか、風は感じるか。目が見えないってどんな感じなんだ?真っ暗なのか?」


「あぅー」


「そうかぁ、真っ暗かー、何も見えないってつまらないだろうなぁ」


「お前の名前は何だったかな、…うーん、そうキャリーだったか」


「うー…」


「違ったか?うーん、そうだマリーか」


「あう!」


「そうかマリーか覚えたぞ、人間の名前など覚えたのはお前が初めてだ、マリーかうん、なかなかいい響きだ。僕はベールバティだ宜しくな」


「ベールバティ様そろそろ戻られてください」


「もう少し良いだろう」


「マリオン様のご命令です」


「ほらマリーおじいちゃんですよぉ」


「誰がおじいちゃんだ!!」


「やーいおじいちゃんが怒った」


「あぅー」


「あ、お待ちください!」


「それで、はぁはぁ、なんとか赤子をお連れしました」


「ご、御苦労だったなゼル」


イリスに任せたマリーが戻って来ないのでゼルに探させていたが、一体何があったんだ…。マリーは疲れたのか眠っている。


それから良くベールバティが俺の部屋を訪れてはマリーと戯れるようになった。魔人の力は強大だ、少し力の入れ具合を間違えれば人間の体などすぐに壊れてしまうだろう、それが赤子ならなおさらの事だ。俺もマリーを扱う際は細心の注意を払っている。


それにしても…。


「やぁマリー今日も遊ぼうか」


ベールバティの奴、危なっかしい、そんなに空中にポンポンと放り投げたり、尻尾の先で巻き付けて天に掲げてみたり気が気ではない。


ソワソワ


「何してるんですか?マリオン様」


「いや、お前のマリーへの好奇心は分かるが、もう少し丁寧に扱って欲しいものだなと思ってな」


「何言ってるんですかマリオン様、ちゃんと卵を割らないような絶妙な力加減で扱っていますとも」


「それなら良いんだが…」


「よっ、ほっ!そーれ!!」


あぁ、そんな事を!っえー!!あれ大丈夫?死んでない?


ソワソワ


「それじゃ、マリオン様また来るねー」


「あ、あぁ」


「大丈夫だったかマリー」


「あーう、あーう」


「そうか、楽しかったか」


見たところ怪我はなさそうだ。人間の赤子とはこんなにも気を使わねばならぬものなのか。


「マリオン様少しよろしいでしょうか」


「イリスか、どうした」


「その赤子の寝床をご用意しました。いくらなんでもマリオン様のベットをその赤子に譲るなど、主にやっていいこととは思えませんでしたので」


「そうか、俺はあまり寝るということはしないから、構わないのだが」


「そうはいきません、ベットとは愛し合うものが互いの愛を確かめ合う神聖な場所、つまり私とマリオン様の」


「分かった、それでその寝床とやらを見せてみろ」


「はい、こちらになります」


「…」


「アークデビルの骨を利用した外殻と、リトルドラゴンの牙をあしらった洗礼されたデザイン、さらにグレイトゴブリンの頭部を切り取り、その口の中に耐衝撃に優れたトロールの腹の皮を敷き詰めました」


「却下だ」


「な、何故でございますぅ?」


「何故って、見た目がおぞまし過ぎるであろう。魔人の俺でも少しひくぞ、しかもそのグレイトゴブリンの頭部まだ生きてるではないか」


「はい、先程切り取ったばかりですので、新鮮な方が良いかと」


「こんな物捨ててこい」


「はぅ!!でももしかしたらその赤子も喜んでくれるやも知れません!」


「そうとは思えないが」


マリオンはマリーをそのおぞましい寝床へと近づける。


「あぅぅぁ…つーん」


「あぁ、ほら泣き出しそうではないか」


「っち、人間にはこの素晴らしいデザインが分からないのですね」


「ともかく、マリーの寝床は心配はない、いざと言う時はドラクの腹の上でもスヤスヤと寝るからな」


「ワン!!」


「それならば問題ありませんが」


やれやれ、俺も含めてまだマリーの扱いには慣れていないようだな。

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