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目と口

作者: ちゅうへい

目は口ほどに物を言う。


有名なことわざである。

しかし、これを実感したことはまだ一度もない。

気づいていないだけなのかもしれないが

うまくこれを使えた試しはない。


もし本当にこのことわざ通りに目が相手に

物を伝えることができれば

物事は今よりもっと円滑に進んでいただろう。


例えば、あなたに好意を伝える時だ。

私は一目惚れすることが多々ある。

名前も知らない誰かに好意を抱いた時、

目で直接、好意を伝えることができれば、

話すことなく、想いを伝えられる。

口で言うハードルを

目はいとも簡単に飛び越えるのだ。


しかし、これには短所がある。

それは、相手の頭の中の語彙内でしか

伝えることができないことだ。


私がどんなにひねった告白をしても、

相手は好きだ、愛しているという言葉でしか

受け取ることができないかもしれない。

逆に私が好きだと目で伝えると、

相手はひねって解釈するかもしれない。


このようなことを考えると、目で伝えるよりも

口で伝えたほうがいいのかもしれない。


こんなことを考えていると、終業のチャイムで

胸が痛む。


教室を抜け、早足で高いところへ向かう。

開放的なところへすぐに。


鳥は嫌いだが、羽が欲しい。

現実は嫌いだが、今が惜しい。



声を聞いた時、それは産声に聞こえた。

好意が生まれたのである。

その声は弱弱しさを持つ反面、

生きていることを主張するような声であった。


口から出す音が声で、

その声を奏でることで言葉が生まれる。


声は音色であり、言葉はメロディーである。


音に一耳惚れする演奏者の気持ちがわかったといえば

生意気だが、それに近いような気持ちであった。


僕も僕の音色でメロディーを奏でることに決めた。

指揮棒1つでは無理だ。


一週間後。

私は彼女に思いを伝えることができた。

僕なりの音色と僕なりのメロディーで。

伝えている時、

私は指揮棒を迷いなく振っていることに気がついた。


目の存在は口を助ける。

結局のところ目は口の補助的な役割なのだ。


好き。愛してる。ありがとう。ごめん。


これら全て言わなければ伝わらない。

目は口ほどに物を言うのであって

想いを伝える時、目は口を決して超えない。


口にすることは恥ずかしいが、

本当の気持ちは伝えたい。



「写真とろ」

彼女が言った。

イルミネーションの光は目に似たものがある。

だからここで告白する人も多いのかと思った。

遠くで伝書鳩が鳴いた。


































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