チューリップ
少しずつ茎をのばし、日々僕らを喜ばせてくれたその花はあと少しというところで蕾のまま枯れてしまった。
やはり、この地球の気候は寒すぎたようだ。加えて、養分の少ない土に霧の影響もあるのかもしれない。
ハルはとても寂しい気持ちになった。
「もうちょっとだったのに。残念だね」
ハルは苦笑いをした。
「そうね。でも、予想はしていたわ」
冬子は当然とでもいうように静かに枯れた茎を眺めていた。
「でも、もしかしたらよかったのかも。ちょうど、オリエンテーションが始まるから。戻って来たら、もう一度担任に球根を貰ってくるよ」
少し神崎さんが驚いた顔をした。
「あ、ごめん。もしかして嫌だった」
彼女は今日で生き物係りとはおさらばだと思ったのかもしれない。僕は余計なことを言ってしまった。
「いや、そうではなくて。私は楽しかったよ、君と。碧くんと花を育てるのは。私も花を咲くのは見てみたいものだ」
「ほんとに?」
だったら嬉しいなとハルは笑った。
すると神崎さんも、ぎこちなく照れくさそうに笑った。
「手が汚れるからと断ってしまったが、今度は、私も球根を植えるよ」
ああ、僕は幸せだ。
ずっと変わらないはずの君との距離が、ほんの少しだけど近くなったよ。
ああ、いつか。
綺麗に咲いた花を君と眺めてみたいな。




