ミラーズ
呆れ顔で祐貴は、頭を掻いた。
「それは、無理だろ」
「確かに、むちゃくちゃだかスレイブを使ってバスに乗れないこともない。でも、危ないだろ。お前の焦る気持ちもわかるが、りこちゃんが落ちて怪我でもしたらどうするんだよ。オリオンが止めに来るわけだ」
「大丈夫よ、カナちゃん。なぜなら、そんな話に乗るわけないでしょう」
ガチャリとりこは、三人分のお茶とお菓子のトレーを持って、自室に入って来た。非常に冷めた目をしていた。
ニャーッとその後ろにオリオンも続く。
「なんだって!」
「当たり前でしょ。ハルちゃんの可愛い妹に何かあったらどうするつもりよ」
りこは憤慨しながら、テーブルにお茶を置く。
「お前は、頭いいのに頭悪いのな」
「う、うるさい」
「じゃあ、俺のスキルを使うのはどうだ?」
「お前のなんちゃってスキルか。時間制限があるだろが」
「そうだか。そこがいいだろ。半日で切れるがまたかけ直せばいい」
「どんなスキルだ」
訝しげに神室は、聞き返す。
「聞いて驚け。名付けてミラー。複数同じものを持ってるからな。スキル、ミラーズと名付けよう」
「それって、なんの話?スレイブじゃないの?スキルってなに?」
祐貴のスキルという単語にりこは、興味を示した。
「まぁ、なんていうか。個人的な特集能力みたいな」
ちょっと焦りながら、祐貴は答える。
「たとえば、このお菓子」
お皿にあった飴玉を一つ手にとってみる。
「スキル、ミラーズ!」
なんと飴玉はパッと消えてしまった。
「でもね、りこちゃん口を開けてみて?」
何もないのにサカサカという音がして、口に何かを放り込まれる。
「甘い」
透明で見えない飴玉がそこにはあった。
「うそうそ。なんで?」
心底不思議そうにりこは、祐貴をマジマジと眺める。
「これが、スキルさ。これで、りこちゃんの姿を眩ませて普通にバスに乗せればいいだろ。俺の権限で何台かあるバスのどれかに資料置き場かなんとか言って、スペースを少しあけさせるよ。りこちゃんとオリオンくらい座るスペースはあるだろう。目的地に着いたらテントを用意しておくからそこで、隠れていて」
サラサラと祐貴は、手際よく説明する。
「このすけこましが……」
「なに?」
「いや、お前は普段バカなくせに頭いいのな」
「これでも、冬子様の護衛役件恋人役だ。当然の、ダッ!!!!」
「今、なんか恋人役って?護衛?」
りこが不審げに二人を見た。
「いや、何も言ってないぞ、碧りこ。言ってないよな、祐貴?」
神室が凄む。
「はい。何も言ってましぇん」
「なんか、カナちゃん痛そうだけどどうしたの?」
「へーき、へーき。脇腹がちょっと」
「すまんな、碧りこ。トイレを借りるぞ。体調が優れないようだから祐貴を疲れて行ってくる」
「う、うん。どうぞ」
そして、部屋のドアがパタンと閉まる。
「はい、やっぱりバーガー、バーガー、余計なこというなよ。正体がバレるだろうが!!!」
神室はキレまくっていた。
「いッ、たいな。わざとじゃないだろ!!それにお前だって、宇宙船、宇宙船うるさいだよ。そもそも、宇宙船の調査をりこちゃんに頼んでるならもうバレてるんじゃないのかよ」
そして、祐貴もキレていた。
「まだ、バレてません。頭のおかしい人だと思われるだけですけど!!!」
「マジかよ。もう逆に、宇宙人ってバラしたほうがよくないか!!!」
祐貴は、ちょっと悲しすぎて半泣きになっていた。




