月に願いを
あの月が綺麗。
あの月が綺麗だと思う。
透き通る静な暗い夜だからこそ、その輝きをますその惑星。
優しい月明かりが、一人の少女を照らす。
薄いレースのカーテンが揺れる。
水色の髪をそっとかきあげながら、冬子は嬉しく思った。
今の自分には、月を見て綺麗だと思える余裕ができた。
この星に初めて来た頃は、考えもしなかったことだ。
それが悲しくもあり、おかしくもあり。
嬉しくもある。
「ジュリ」
「はっ」
名を呼ばれたジュリはかしこまって、冬子の部屋で片膝をついた。
「私は決めた。このオリエンテーションが終わるまでに、碧ハルと友達になる」
「はっ?」
いつも表情を変えないジュリが、困惑しながら聞き返す。
少しの居心地の悪さを読み取り、冬子はどもった。
「いや、母船の件は予定どおりだ。政府に気付かれないように、我々の情報を回収する。それは、それとして。これはクラスメイトと親睦を深めるよい機会だ。私達もこの生活に慣れはしたが、いまひとつクラスメイトに隔たりがあるように思える。だから、私が先人をきってまず友達を作ってみようではないかと言っている」
つらつらと若干早口でまくし立てて、ホコンッと小さく咳をする。
「さ、さすが。冬子様でございます。私は、調査のことで頭がいっぱいでオリエンテーションを人間らしく楽しむという余裕がなく、考えが及びませんでした。さすが冬子様」
「で、あろう」
内心ひやひやしながら、冬子は余裕の笑みを浮かべた。
「では、そのように致します。それでは、私は準備がありますので今宵はこれで」
軽く会釈をして、ジュリは立ち上がり部屋を後にする。
「ジュリ」
「はい」
「カレー作りの班は、私を碧ハルと同じ班にすること忘れるでないぞ」
「かしこまりました、冬子様」
そう言って、ジュリは静に部屋の扉を閉めた。




