トワイライトムーン
りこは僅かに顔をしかめた。
「大丈夫だよ、妹よ」
「ちょっとオリエンテーションが楽しみ過ぎて跳んだり跳ねたりしてたらね、足を滑らせて廊下で転んだだけだよ」
家のソファーに座りながら、苦しいぜこんちきしょーと思いならがらハルは苦笑いをする。
「それで、全身打撲?」
「そうそう。廊下のワックスがよく滑ってな。まぁ、シップでも貼ってればすぐによくなるよ」
「それならいいんだけど。ハルちゃん、気を付けてよ」
「うんうん。今度から気を付けるから」
いちよう、なっとくしたのか妹はベランダのほうに歩く。
「何か見えるのか?」
「ううん、何も。ただ、今日は月が綺麗だから眺めていたいなって。ハルちゃんも見る?」
「いや、お兄ちゃんは満身創痍だからソファーで休んでるよ」
「それがいいね」
りこはベランダの扉をガラリとあけた。
落ちてきそうなほど見事な満月だった。
それを手すりに身を委ね、りこはゆっくりと眺める。
ああ、綺麗だ。
「ハルちゃん、月が綺麗だよ」
「よかったな」
疲れていたハルは小さく返事をして、そのまま目を閉じた。
「んっ?」
綺麗な月明かりの余韻を壊す、虫が見えた。
小石くらいのスレイブを作って、それに向かって孟スピードで投げてみた。
遠くでなにやら鈍い悲鳴が聞こえた。




