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 立派な机の上にバサッとその資料は投げ捨てられた。





 ゆっくりと顔に皺を刻んだ老人が立ち上がる。

 それに対峙する形で美しい少女は立っていた。



「これはなんだ」

「今回のオリエンテーションの概要だ。よくできているだろう?ただ一つ足りないものが宇宙船の正確な座標だ。そこを調べて欲しい」

 透き通った青い瞳を少女は向ける。



「お前は面の皮の厚い人間だな。いや、人ではないか。神崎冬子」

「そうだな」

 涼しい顔で少女は返す。



「おとなしくしていればいいものを。平穏な生活が好みなのではないか?」

「それはそれとして。打てる手は打っておきたい。情報戦において常に優位に立っていたいのだ」




 今度は老人が眉を吊り上げる。

「わがままがすぎるぞ。わしがもし、手の平を返してお前たちを政府の人間に引き渡したらだうなると思うのだ。助けてやった恩を忘れたのか」

「恩は忘れていない。だが、あなたとてそうするがの莫大な見返りを生む可能性を考えてのことではないか?私達は対等だ」



「なんだと」

「もし、このまま平穏に時が過ぎれば私達は持てる力の限りで政府の重要ポストにつきあなたに恩恵を。もし、不測の事態が起きれば異星人との唯一の交渉役として対処する。あなたの功績も認められ、政府の上層部に返り咲くことも、異星人が本当にいたというあなたの研究も認められます。不測の事態の方があなたの望むところでは?」





 ハッと老人は笑う。

「お見通しか」

「でなければ、私達を保護する理由がない」


 やっと老人は椅子に腰を下ろす。

「だが、リスクは大きいな」

「でも、その見返りもいずれ大きなものになるかもしれません。あなたの力でお願いします。理事長」

「人にものを頼む態度ではないぞ。だが、やってみるか」




 ジッと冬子は彼を見つめた。

「なんだ?」

「いえ、あなたが野心家な人間でよかったと思いましたので」



 いまさらながらに思うが、身よりもない自分は賭けに出た。もし彼が、そういう人間ではなかったら、政府に引き渡され人体実験の標本になっていたかもしれない。少しだけそんなことを考えた。





「あと、これはなんだ」

「それは私用です」

「だが、これは意味があるのか?」





「はい、もし彼と友達になれたら異文化コミニケーションも可能という証明になります」

「それは、意味はあるのか?」

「特にないです」





「君ははじめて会った日からわがままがすぎるぞ」




 やれやれとばかりに放り出した資料には、オリエンテーションの班分けの名前が書かれていた。




 神崎冬子と碧ハルの名前が当然のように並んでいた。








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