取引
マンションを降りてきた碧りこは髪を掛け上げた。
「さぁ、私とハルちゃんと憩いの時間を邪魔してなんのつもりかな?」
片手にスレイブで作ったシールドを高く掲げ、りこはその人物を睨みつけた。
ジャリッと後ずさる音がする。
「わっ、ちょ。待て待て!!!!!!!!」
頭に葉っぱを乗せたまま神室は慌てる。
「いやいや、覗きとか最低だからね」
りこは呆れる。
「違うんだ。違うんだよ、おまえに話があるんだ」
「お前?」
「あっ、いや。碧りこ。りこさん」
「なら、普通に玄関から来ればいいじゃない」
「内密な話で、祐希にもジュリにも冬子様にも知られたくないんだ。あと、碧ハルにも」
「いや、いや。そんな話は私も知りたくないからね」
面倒は御免とばかりに、りこは目を逸らす。
「今度のオリエンテーションについてきて来てほしいんだよ」
「えっ?はっ?無理だよ」
「そのオリエンテーションで内密に船の修理をしたいんだ」
「いや、私はハルちゃんの学校の生徒じゃないから。まだ小学校に通ってるから。しかも、ハルちゃんの合宿先は森?というか山だし。船なんてないから」
「いや、船はあるんだ」
「とにかくお断りよ」
「そこをなんとか。夜中にこっそり修理に行くだけだ」
「それが無理なんだって」
「小学校なんて風邪かなんかで休みってことにすればいい。とにかくお前の力が必要なんだ」
「お前?」
「あっ、いや。りこさん」
「とにかく無理なものは……」
神室はスッと三枚のカードのようなものを取り出しだ。
「これが欲しくはないか?」
「なによ。私は物なんかで……」
そこにはよく撮れた兄の素敵な写真があった。
りこはそれを流れるように受け取り、ポケットにしまい込んだ。
「まぁ、行ってあげてもいいけどね」




