高く飛べ
鋭い剣先を間一髪で避ける。
美しい水色の髪が僅かに切れてた。
「あら、避けましたの?よそ見をされていましたので、もう諦めたのかと思いましたわ」
クスクスッと甲高い声が聞こえた。
冬子は足を踏みしめた。
そう。
私は避けたのだ。
無様に負けたくなくて。
あがいたのだ。
だって、こんな姿が見られたくないじゃない。
諦める私の姿は最高にかっこ悪い。
せめて君の前では凛として前を向いてる私でいたい。
冬子は一度目を閉じて、もう一度目をゆっくり開けた。
「いいえ。諦めてなんかないわ。私は強いもの」
一歩踏み出して、瞬く間に距離を詰める。
急な反撃に、稜楓の顔色が変わる。
「ちょっ」
ひるんだ相手に冬子は、たたみかけて攻撃をする。
「くっ」
慌てて稜楓は距離をとる。
いい判断だ。
「動きが少し変わりましたか?」
後ろに下がった彼女は尋ねる。
「ええ。フェンシングはあまり詳しくないので、私の知っている剣術でやらせてもらうわ」
「ふん。生意気ね。ルールにのっとるであればそれでいいわ。好きになさいな」
剣術は一つしか知らない。
王宮剣術のみ。
雨の日も。
風の日も。
嵐の日も。
手が腫れても。
たとえ血が滲んでも。
私は剣を離さなかった。
たぶんそれは、いつか勝つため。
いつか勝ちたいと思った日のため。
私は自分を鍛え続けた。
いつか弱い自分を超えていくために。
だから私は負けない。
「ちょ、ちょっと。うそ」
私はあっという間にスコアを盛り返した。
あと、一点。
「こんなところで私は!!!!」
稜楓が鋭い一撃を放つ。
私は高く飛んだ。
ヒラリと軽く身をひるがえし。
高く飛んだ。
その攻撃をいなして、さらに鋭く重い一撃を放つ。
終了を告げるベルが会場に響き渡った。




