友達になりたい
いつもとは違う道を歩いていた。
角度を変えた景色は、見たことのない色だった。
「つき合わせて、悪いな」
ぶっきらぼうに遠坂が声を掛けてきた。
「いいさ、別に」
僕は軽く答えた。
ミーティングなんて言いつつも、ただの寄り道だ。
昔から勉強、勉強で友達と遊んだことはなかったので、ハルはソワソワしていた。まぁ、でも僕が地味で大人しい性格なので、上手く話しかけかれなかったんだが……。
つまり、なにが言いたいのかという実はちょっと楽しい。
昨日の夜にその話をしたら、妹は喜んでいた。オリオンもニャーと鳴いていた。
僕もついに、友達が出来てしまった。
今日は帰ったら、妹に自慢してやろう。
ハルは遠坂と学校から少し外れた小さく古びた喫茶店に入った。
カラランと鈴の音がして、優しそうな女の人に出迎えられ席に座る。
「何にする?俺はコーヒー」
メニューを見ながら悩むが、なぜか緊張してしまった。
僕も遠坂と同じものを頼んだ。
「そういえばさ、ハルはウェールズ事件って知ってるか?」
「うん、まぁ。有名だからね。未確認飛行物体の墜落したって話。でもデマだったんだろ?」
「いや、あれはマジだぜ。政府の隠蔽も本当」
ハルは眉を顰める。
「隠蔽ってなんで?」
「それはな、政府の失敗を隠すためさ。俺の情報によると、未確認飛行物体に生存者がいたんだ。それを政府はまんまと取り逃がしてしまったからなのさ」
「宇宙人が逃げたってこと?嘘だろ」
「いや、本当だ」
遠坂は腕を組んで息巻いた。
その俺情報の自信はどこからくるのか?
「で、俺としてはその宇宙人を探し出して新聞にスクープにしたいわけよ」
「いや、それは無理そうだから別のにしよう。うちの猫、背中の模様がオリオン座になっていて珍しいからそれを新聞にしよう。写真も撮っていいぞ」
「いや、なんでだよ」
「宇宙人なんて、探してる間に卒業しちゃうだろ。てじかなものから行こう」
「いや、近すぎるだろ。お前んちの猫じゃん」
遠坂が憤慨する。
だってうちのオリオンは可愛いからな。
「お待たせしました」
ちょうどよいタイミングでコーヒーが運ばれてくる。
二つのカップがテーブルに置かれる。
いい香りだ。
コーヒーの横には、ちょこんとネコのクッキーが添えられていた。
思わずクッキーをほおばる。
美味しい。
苦味のあるコーヒーによく合う。
妹にも食べさせてあげたい。
そんな僕を見ながら、遠坂は一つ溜息をつく。
「じゃあ、今回は諦めてフェンシングの試合でも新聞にするかな。神崎冬子の写真でも撮るか」
ハルはコーヒーを噴出しそうになった。
「な、なんで急にそうなったの」
「てじかなところって言ったら、そこしかないだろ。お前んちの猫の背中なんか誰が興味あるんだよ」
「写真撮るのか?」
「新聞だからな。それがどうかしたのか」
僕は、ちょっと言葉に詰まる。
「あの、その……」
「なんだよ」
「一枚、僕も欲しいな」
やめてくれ、哀れみの目を向けるのは。
「振られたんだろ?」
「そうだけど」
好きなだけなら許されるだろうか?
「未練がましいな」
「そこをなんとか」
僕は未練がましい男なんだ。
「ふ~ん。まぁ、いいぜ」
「でもよ、お前はこれから神崎とどうなりたいんだ?」
「それは」
彼女とはクラスメイトで。
生き物係。
これ以上は望めない。
でも、僕はそれ以上のことを望んでる。
「僕は……」
俯きながら、遠坂に聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
「友達になりたいな」




