ウェールズ事件
あれはいつ頃だったろうか?
たぶん三年くらい前だったような気がする。
緑が多い、隣街の静かなウェールズに白い光と爆風が起こった。
思いのほか事態はすぐに収束した。
なんでも他国からの威嚇ミサイルだったとか。
あまりに迅速な政府の対応に、宇宙船の墜落を隠蔽しただのなんだの憶測が憶測を呼んで「ウェールズ事件」と呼ばれていた。今でも、その付近にはテープが張られ立ち入り禁止地区になっていた。
放課後、僕は神崎さんに呼び止められた。
「えっ?」
少し固い表情で、微笑んだような様子だった。
「今度の日曜なんだけど、碧くんは予定あるの?」
僕は、校内のそこらじゅうに貼ってあるポスターを思い出した。
「ああ、フェンシング試合だったね。神崎さん、すごいよ」
「うん。ええ、あの。君は試合を見にきたりする?」
「僕も応援に行きたかったんだけど、その日は遠坂と新聞のネタの調査に行くんだ」
「そうなのね」
彼女は静かに答えた。
少し落胆したトーンだったのは気のせいだろうか。
「ご、ごめんね。先約で、遠坂は友達だし」
「友達なら仕方ない」
いつものように彼女は微笑む。
なんだ気のせいか。
「あっ、あと今日は遠坂とミーティングだから花壇にはいけないから。神崎さんもクラス委員だよね?」
「ええ、そうね。じゃあ、また明日」
なんだかそっけなく神崎さんは去っていった。
そんな彼女の後ろ姿を僕はただ見送った。
神崎冬子は、下校しながらジュリに話掛ける。
「聞いていいか、ジュリ」
「はい、なんでしょうか?」
「碧くんは、私より遠坂を優先させるのは何故だ?」
しばらく相馬は考える。
「友達だからではないでしょうか」
「では、私はなんだ?」
相馬はまた考える。
「クラスメイトですね。あと同じ生き物係ですね」
「そうか」
さらりと冬子は返事をした。
そして、しばらくしてからまた口を開く。
「友達ではないのか?」
相馬は少しばかり困る。
「友達ではないような気がします」
「どうやったら、友達とやらになれるのだ?」
「申し訳ありません、私にはわかりかねます」
歩きながら、冬子はポツリとそうかと呟いた。




