宣戦布告
稜楓は掲示板の前で指示を出していた。
「そう、もっと上に」
「はい、旭様」
しもべ達は、ちゃきちゃきと動く。
「そこよ」
「はい、旭様」
彼女達の手により、でかでかとポスターが張られることとなった。
そこには、美しくフェンシングをする旭稜楓の姿が映っている。でかでかとVS神崎冬子の文字が書かれている。普通の勝負では花がない。学校の校庭を貸し切り、舞台を建設、生徒だけでなく、教師、校長、理事長、来賓もたくさん呼ぶことにした。
華々しく、私の勝利を彩るためだ。
なんて、素晴らしい計画なの。
「ほっ~ほほほほほ」
菱楓は腰に手を当てて、高笑いをする。
「素晴らしいですわ、旭様」
「ええ、当然よ」
きっと、華麗な私の姿を見れば祐貴くんも取り戻せるわ。
「でも、旭様。こんなに大げさにしてしまっては、神崎冬子が負けて恥をかくのではないでしょうか?」
親衛隊の中でも、内気な少女が声を上げた。
「いい気味じゃなくて?」
他の少女が聞き返す。
「お待ちなさい。私を誰だとお思い?旭稜楓ですわよ。正々堂々と戦った相手には、手を差し伸べますわ」
優しい私は、観衆の心も祐貴くんの心も頂きですわ。
「さすがですわ、旭様」
「感服致します」
「ほっ~、ほほほほ」
稜楓は高笑いしながら、廊下を歩く。
その足取りは軽やかだった。
神崎冬子は、ある掲示板の前で立ち尽くしていた。
「なんだこれは?」
「はい、試合のポスターかと」
「そういうことじゃない。勝負はすると言ったが、これは大袈裟過ぎるのでないか?」
「試合は観客あってこそです。旭稜楓があまりに大口を叩いてきたので受けてたちました」
「なんでだ?」
冬子は頭が痛くなった。
「いいか、負けるための試合だぞ。私は、学校の校舎裏などを想像していたのだが?」
「下等生物の分際で、冬子様に偉そうな口を叩いておりましたもので。つい」
全校生徒が見てる前で、負けろということは。
それは、つまり碧くんも見てるということだ。
勝つつもりはないが、それはなんともかっこ悪いと思った。
「大丈夫です、冬子様。上手く負ければいいのです」
「無茶を言うな」
冬子は酷い眩暈を覚えた。




