シャッフル
「おい、何をこけているんだ?」
すっころんだハルに、不審げに祐貴が声を掛けた。
そして、部屋の奥を見る。
「んっ」
「げっ、なんでいるんだよ。神室」
「なんだ。祐貴お前か。俺は、スレイブ研究の一環として来ているんだ。ほっといてくれ」
痴話げんかが始まりそうなところで、僕は立ち上がる。
「喧嘩するなら帰ってくれ」
二人は顔を見合わせる。
「喧嘩などしてはいない」
「そーだぞ」
二人とも帰る気はなさそうだな。
祐貴は、リビングの妹の方に歩いていく。
「りこちゃん、遊ぼう」
「何を言う、祐貴。大事な研究の途中だぞ」
今度は矛先が妹に向く。
「ハルちゃ~ん」
そして、その矛先はさらに僕に向く。
「ニャ、ニャ!!」
オリオンも腹が減ったと騒ぎ出した。
ああ、もう。
僕の平穏どこに行った?
「とりあえず、りこはオリオンのごはん。僕はカレーライスを作るから、二人は静かに座ってて」
そう言うと、素直にりこは行動に映した。
祐貴くんも楽しそうに、それに加わる。
「さてと」
そして、僕はキッチンに立った。
「スレイブ!」
スレイブを起動させ、カレーのレシピを表示させる。
包丁を取り出し、まな板の上で玉ねぎを切る。
うおぉぉぉ。
なんだこれ。
涙が出るぞ。
僕は黙々とカレーを作り始めた。
ふと、人影が横に立つ。
「手伝うが?これを切ればいいのか」
「神室くん?」
真面目な顔をして彼は立っていた。
「う、うん」
神室くんに人参を切って貰っている間に、僕はフライパンで玉ねぎを炒める。
「手伝って貰っていいの?」
彼は手際よく、人参とじゃがいもを切っていく。
「ああ、碧りこは祐貴とあやとりをしているからな」
「君はいいの?」
「ジャンケンに負けてはしょうがない」
意外と祐貴くんも神室くんもおちゃめで、僕は驚いている。
学校で見せている顔とは、ちょっと違う。
「ねぇ、りこに何の用だったの?」
「船を直すために手伝って貰っている」
いや、よくわからない。
「えっと?船」
「ああ。そのためには君の妹の協力がいる。手間はなるべくとらさないようにする」
「そっ、そう」
いや、なんと言えばいいのか?
この人、船で旅にでも出るのか???
「すまないが、俺が船を直すために動いていることは冬子様には黙っていてくれ。無用な心配を掛けたくない」
「わかったよ」
僕は承諾した。
神崎さんの親衛隊?の人だ。
突然、船に乗って旅に出たりしたらきっと彼女も悲しむだろう。
コトコトとカレーを煮込みながらハルは思った。




