弟子入り
碧りこは、足を止めた。
「なに?」
相手は何も言わない。
「家までついて来ないでよね。言いたいことがあるなら今言って」
ツインテールの髪をふわりと揺らしながら、りこは振り返る。
そこにいるのは、黒髪のメガネの美少年。
「その、こないだは悪かった」
「それはもういい」
りこは眉を細めた。
彼は決意したかのように声を上げる。
「お前は、どこでスレイブを学んだんだ」
「お前?」
神室はりこに睨まれて、しどろもどろになる。
「あっ、いや。碧りこ。その、すまない。何て呼べばいい?」
「りこでいいわ。そんなのハルちゃんのを見ただけよ」
「見ただけだと?」
「あんなの簡単よ。適性があればね」
「DNA適性があっても、そんなに簡単に扱える代物ではない」
「本当に何の用?」
りこは溜息をついた。
ハルちゃんの学校は変わった人が多いと思いながら。
「俺は、船を作りたいと思っているんだ」
「船?」
「ああ、その船で故郷に帰りたいと思っている」
「えっ?帰れば?」
「それは、無理なんだ。俺にはまだ力が足りない」
りこはランドセルを背負いながら、空を見上げた。
どうしよう。本当に変な人だ。
「港の方にいけば、誰か力になってくれるかもよ。じゃあ、ハルちゃんが待ってるから帰るね」
あまり視線を合わせないように、りこは歩き出した。
「待ってくれ」
「ついて来ないで」
「その技術を教えて欲しいんだ。俺の技術と組み合わせれば、新たなスレイブの可能性が開ける」
「興味ない」
「報酬は弾む」
「もうお金はいいよ」
「じゃあ、何が欲しい?なんでも言ってくれ」
「いらないよ」
うわ~。
ハルちゃん、この人本当に変人だよ。
「待ってくれ。俺は故郷に帰りたいだけなんだ!!!!」
「帰ればいいじゃん!!!!」
イライラとりこは言い返す。
「船が壊れてるんだ!!!!」
「じゃあ、直せば!!!!」
「無理だ。技術と人手が足りない!!!!」
「諦めたら!!!!」
「諦められない!!!!」
クッソ。
しつこい。
押し問答の据えに折れたのは、りこの方だった。
「そんなに船を直したいの?」
「勿論だ。直せるものならな。俺は、ただの学生で終わるつもりはない。冬子様の気持ちもわかるが、可能性があるなら俺は…」
どうしよう。
この人、海賊王にでもなるのだろうか?
熱弁を語られたりこは、頭のを抱えた。
私は、ただハルちゃんと静かに暮らしたいだけなのに。




