迷惑
誰もいなくなった教室。
冬子は差し出された手紙を読んで溜息を落とす。
「どうさかれましたか?」
「いや、なんでも……」
そう冬子は言いかけて止める。
ジュリなら支障ないか。
「いや、聞いてくれないか?果たし状を貰ってしまったのだが、どうすればいいと思う」
短い髪の少女。相馬ジュリは、静かに考える。答えは決まっているのだが。
「冬子様のされたいようになさればよいのでは?」
「穏便に済ませたいのだ」
「そうですか。ところで、これは誰からなのです?」
「旭菱楓という他のクラスの生徒からだ」
「ああ、二位の人ですか」
つまらなさそうな顔で相馬は答えた。
「フェンシングの試合で決着をつけたいみたいだな」
二人とも首を傾げる。
「なんの決着ですか?」
「さぁ。それがわからんのだ」
「もしかしたら、選挙戦が原因ではないでしょうか?ライバル視されているのかもしれません。冬子様の足下にも及びませんが」
「選挙戦は出ないと言ったろ。クラス委員で十分だ」
冬子は果たし状をクシャと丸める。
「決闘は断ることにする」
「角が立つのでは?」
「ではどうすればいい」
美しい青い目でジュリを睨む。
「負ければいいのでは?」
「なんだと?」
「ですから、うまく負けるのです。最善を尽くしたが、あと一歩及ばすと。冬子様の悔しそうな顔でも見れば、もう突っかかってくることもないでしょうね」
「それは、いい考えだな」
「とはいえ、彼女はフェンシングの腕が良いので冬子様も苦戦されるかもしれませんよ」
相馬は意地悪く笑みを浮かべた。
「願ったり叶ったりだ」
「では、彼女には私からお伝えしておきます」
「ああ、頼む」
その、会話が終わったあとに冬子はふと気付く。
「どうかされましたか?」
「神室はどうした。祐希はともかくとして」
「所用があるとかで」
「そういえば、あいつは最近出掛けることが多いな」
「私もよく知りませんが、スレイブの研究ではないでしょうか?」
「そうか」
それを言われると弱いのだ。私達の体は人間とは違う。
この星の人間はランクの違いはあれどスレイブ適用可能な身体を持つ。そして、成長と共に技術を学ぶ。
そのため皆がスレイブとやらを使える迄には、私達もそれに適応出来ていなければおかしい。
神室には無理を言って急かしているため。彼の行動を縛ることは不可能だな。僅かに不安を覚えたが、冬子はそれをすぐに打ち消した。




