タコさんウィンナー
遠くから妹が走ってくる。
そして、僕も妹に両手を伸ばす。
「ハルちゃん」
「我が、妹よ」
ヒシィ!!!!!!!!!
僕と妹が抱擁している、後ろをゆっくりと神崎さんと祐希くんが歩いてくる。
「妹よ。楽しかったか?」
「うん。でも、これ仲直りできなさそうだよ」
「マジか……」
僕らは小声で話す。
しばらくすると、ようやく彼らは追いついた。
「何を話しているの?」
「あっ、いや。そろそろ、お腹すいたなってね」
神崎さんの方を見る。
「そうね、祐希どうする?」
「じゃあ、あそこにテラス席で何か食べよう。俺が適当に買ってくるよ」
「あっ、待って」
そんな二人にハルは声をかけた。
「昨日、お弁当を作ってきたんだ。みんなの分、よければ食べてもらえないかな?その、植物園のチケットのお礼に」
「私も手伝ったよ。ね、ハルちゃん」
りこにも加勢してくれる。
普段からフランス料理でも食べてそうな彼等の口に合うかか疑問だが。でも、祐希くんはうちでレーション食べてたし大丈夫だろう。
戸惑いながら、神崎さんは答える。
「いいの?」
「もちろんだよ」
僕は、さっそくリュックからお弁当を取り出してテラス席に広げた。お弁当の中身は、卵焼き、唐揚げ、タコさんウィンナー、ミニトマト、スパゲティ、おにぎり各種。水筒にはお茶とペットボトルも持ってきた。
普段は簡単で安いレーションに済ませるが、僕は腕によりをかけて支度した。
「どうかな?あれ?」
二人が顔が軽くこわばっている。
「食べないの?」
妹が不思議そうに声をかける。
「いえ、そんなことはないわ。あまり見たこともない食材ばかりなので驚いてしまって」
普段フランス料理だから質素?すぎたのかも。
あと、祐希くんはこちらを睨んでいる?
そして、立ち上がる。
「なんだ、これは!火星人がい……」
ドス!!!!!!!!!!!!!
鈍い音がした。
「祐希くん!」
神崎さんの肘鉄がクリテカルヒットする。
「あっ、いえ。碧くん、この赤い物体は何かしら?」
「これ、タコさんウィンナーだよ」
「タコさんウィンナー?」
「ほら、赤いウィンナー?お肉を切ってタコの形にして、炒めてゴマをつけたんだよ」
「食べ物なの?」
「食べ物だよ?」
妙な間が空く。
食べ物じゃなかったら、なんだって言うんだ?
「嘘だ。じゃあ、この黄色いのはなんだ」
祐希くんが立ち上がって吠える。
「えっ?卵焼きだけど????」
エリートと庶民では、そこまで格差があったのか。
僕はカルチャーショックが受けた。
「祐希くん達は、普段は何を食べてるの?」
思わず聞いてしまった。
「いや、そりゃあ、まぁ。レーションとか栄養剤とかな」
目をそらしながら、祐希くんは座る。
マジか。
誰も手をつけない。
見かねた妹が、皿にタコさんウィンナーとひょいと取って祐希くんに近づいた。
「美味しいから食べてみなよ」
ハルちゃんが作ったんだよ、と言いながらザクッとフォークに突き刺して口に押し込んだ。
「もがっ!!!!!」
もぐ。
もぐ。
もぐ。
「祐希くん。無理しないでいいよ」
神崎さんは心配そうに彼を見ていた。
そして、神崎さんも祐希くんを見る。
ごっくん。
「か、火星人なのに。美味いです」
「それは、本当か?」
「はい、危険なものではありません」
彼らは彼らにだけわかるようなコミュニケーションをとっていた。
その後も、珍妙な食事風景が繰り広げられていく。
「ど、毒!!!!!!」
「毒なわけない。それ梅ぼしだから」
緑茶を入れて、僕は祐希くんにコップを差し出した。
「嘘をつけ、こんなもの……」
ごくん。
「いや、意外にクセになる味だ」
どっちだよ。
「碧くん。この火星人を模倣した赤い物質は、とても美味ね」
神崎さん、独特の表現だ。
「ハルちゃん、ハルちゃんの学校の人は変わってるね」
「そうかもしれないな……」
珍妙な会話をしながら食事をする様子を眺めながら、そう思った。




