キャットフードの怪
マンションの怪現象。
詳しく言うと、僕の玄関前で、おこっている。
そして、今日もまた。
玄関の扉前に置かれたキャットフードが目に飛び込んでくる。
何故???????
誰なの??????
オリオンを飼って、からなのだが。
家の前にキャットフードが置かれるようになった。最初は、もしかして神崎さんから???などとも思ったが、どうやら違うようだ。
彼女とは同じクラスだし、同じ係だ。だいたい同じ頃に帰宅するのに、先回りしてキャットフードを置くことなんて出来やしない。
よって、他の誰かだ。
気味悪く思ったが捨てるのも勿体無い。調べると、毒は混入してないようだったので使うことにした。
だが、ここ最近は毎日に置かれる。
何故?????
猫そんなに食べないから。
お徳用三キロが毎日、家の前に宅配?され困惑していた。
アマ○ンじゃなよな。
まさに、これは怪現象だった。
これ、新聞部のネタになるだろうか。
てか、誰だよ。
ありがた迷惑にハルはこのところ頭を悩ませていた。
その夜。
僕は妹とレーションを食べながら会議をした。
「いいじゃん。オリオンも助かってるよ、ハルちゃん」
「でも、気持ち悪くない?最近、過剰だし。家がキャットフードに占領されそうな勢いで怖いんだけど」
「気持ち悪くないわけじゃないけど、どこかの善良な市民が気を利かせてくれたんだよ」
「でもさ、猫飼ってるってっ、申請を出した大家さんくらいしか知らないんじゃない?」
「じゃあ、大家さん?」
「う~ん」
ハルは首を捻った。
「じぁあさ、誰が置いているかこっそり確認しようよ。私、やるよ」
「駄目。可愛い妹に何かあったら困るだろう。ストーカーだったらどうする」
僕は断固反対した。
「僕がやる」
「でも、ハルちゃん生き物係なんでしょう?どうするの?」
「う~ん、明日は、遠坂に頼むか」
そして、僕は代わりに怪事件のネタを提供するとしよう。神崎さんには悪いが、そうしよう。うん。うん。
神崎さん。
神崎さん、それにしても彼氏いてたんだ。
そりゃあ、振られるよね。
神崎さんが好きになるだけあって、めちゃめちゃかっこよかったな。
祐希くん?だっけ??
めちゃめちゃ、睫毛長いかったな。
目の色も、金色に少し緑かかってさ。かっこいい。
ああ、彼氏か。
なんて、羨ましい。
叶うことなら、僕も超絶美形に生まれたかった。
「ハルちゃん、もしかしてまた泣いているの?」
亜麻色の髪の可愛い妹とオリオンが覗き込んでくる。
「泣いてなんかない」
「じゃあ、どうしたのよ。黙っちゃってさ」
「神崎さんに、彼氏がいたんだよ」
「あら、でもそんなに美人ならいるでしょ。ハルちゃん知らなかったの?」
「うん。そういうの疎くて。でさ、その彼氏がめちゃめちゃかっこよかったなんだよ。なんか落ち込むなぁ」
「ハルちゃん、さぁ」
妹がレーションを食べるのをやめた。
「まだ、好きなんじゃない?神崎さんのこと?」
「そうだよ。駄目かな」
振られたのに。
彼氏いるのに。
まだ、ちょっと好きみたいだった。
「ふ~ん。まぁ、しばらくは仕方ないわよ」
妹が哀れみ視線を僕に送る。
クラスメイトで、生き物係。
それだけでもラッキーじゃないかハル。
僕は自分に言い聞かせる。
神崎さんにはこれ以上は関わらない。
彼氏にも関わらない。
きっとそれで、僕のささやかな平穏は戻ってくるだから。