ああ、友よ
ハルは、学校のプリンスことイケメン美少年。祐希に呼び出された。
お察しの通り。俺の彼女に~、以下省略。
である。
放課後。
僕の肩をがっしりと掴んで、遠坂が神崎さんに向かって勢いよく言い放った。
「ハルに用事あるから、こいつ連れて帰るわ。よって、生き物係はお休みな」
「えっ、遠坂」
「じゃあな、神崎。では行くぞ、ハル」
「う、うん。ごめんね神埼さん」
空気を読まない遠坂が空気を読んだ瞬間だった。
神崎さんの顔を見ないように、僕達はすぐに教室を後にした。
誰もいない通学路で、ハルは遠坂にお礼を言った。
真っ赤に腫れあがった頬の訳を聞かれたくはなかった。だから、とてもたすかった。
「有難う」
「気にすんなって、俺もやられたからな。俺の女に手を出すなってやつだろ」
「えっ?」
「お前の告白。あれな、彼氏がいるからやめておけって思ってな。言いそびれて言ってなかったけど」
「そうなの?」
「ああ、俺も彼氏がいるなんて知らなかったから、神崎に絡んで顔面ボコボコよ。まっ、俺もちょっとしつこかったけどな」
「そういえば、一学期の最初の頃しばらく休んでたよな」
「それそれ」
通りで、遠坂の印象が薄かったはずだ。
「で、イケメン彼氏が出てきてから告白しようという勇者はいなかったわけなのだが。まねけがたまにいるんだなこれが。ちらほら、ラブレター攻撃は終わらないが、だいたいみんな諦めるのさ」
「遠坂、お前いい奴だったんだな」
「そうだろう。そうだろう。俺っていい奴だろう。ハル。でだ、ここからが肝心だ。そして、それな俺に恩を返したいだろう」
遠坂にガシッと肩を掴まれる。
「俺、この学校の新聞部なんだ。スクープの取材を今度手伝ってくれよ」
「この時代になんて、アナログなことをやってるんだ。あと、なんの脈絡ない話を持ってきたな」
「そうなんだ。だから俺は、部長兼副部員兼部員やってるんだ」
遠坂は華麗にスルーをする。
「それは、忙しいな」
「だから、困ってるんだよ。いろいろと」
「まぁ、遠坂には借りがいろいろとあるわけだし。時々なら手伝うよ」
友の顔がキラめく。
「やりぃ、お前は、何が好き?ネッシーか、幽霊?それとも宇宙人?」
「あんまり興味ないな」
星とか、天体は好きなのだが。
「そういや、ハル知ってるか。何年か前の、未確認飛行の騒動。ニュースにも出ただろ?あれとか面白そうだ。調べてみようぜ。結構、近くだったんだぜ」
「結局マスコミのデマだったじゃないか」
呆れた顔で、俺は遠坂を見た。
「いや、もしかしたら政府が隠蔽してる可能性だってあるだろう」
「そうかな?」
「そうだぜ。だって、そのほうが断然面白い」
ガッツポーズで、遠坂の熱弁に力が入る。
帰り道は、面白い話をたくさん聞かせて貰って楽しかった。
その話を聞きながら、ふとハルは我が家の怪事件を僕は思い出す。