優しい光の中へ
「オリエンテーションも終わって、明日からまた学校だね」
りこが話しかける。
「そうだな」
朝食を食べながら、僕は頷く。
今日は、日曜日で学校もお休みだったのでゆっくりと過ごしていた。
「ハルちゃん、コーヒー飲む?」
「うん、有り難う」
りこは立ち上がってキッチンに向かう。
「それにしても、なんか朝から騒がしいね」
「そうだな。なんかお隣に誰か引っ越してくるみたいだぞ」
「そうなんだ」
ガチャガチャと食器の音が聞こえる。
ピンポン。
小さくインターホンが鳴る。
「僕が出るよ」
ハルは立ち上がって、玄関に行く。
「はい」
ガチャ。どうやら、それは越してきた人のようだ。何故ならば、引っ越し蕎麦を持っている。
ハルは深呼吸して、顔をあげる。
「間に合ってます」
すぐさまドアを閉めようとするが、どうやら遅かったようだ。
もの凄い力でドアをこじ開けてくる。
「間に合ってます」
「おいおいおい、せっかく引っ越しの挨拶に来たのにあんまりだろう。蒼ハル」
「いやいやいや、祐希くんこそ。君、たしか学校の近くの寮に住んでるはずたよね」
「だから、越してきたんだ」
「いや、だからなんでさ」
「だってお前んち遠いじゃないか」
「何を言ってるだ君は」
奥からりこも出てくる。
「ハルちゃん、何やって……。げっ、メガネ。じゃなくて神室くん」
「へっ?」
よく見るとその後ろには、神室くんがいた。
「まかさ、君も」
「馬鹿を言え、俺はお前達の隣の隣だ」
「ああ、つまり神室くんも引っ越してきたわけね。わけがわからないよ。ちなみに神崎さんは?」
「馬鹿言え、あの方はお忙しいのだ。それゆえ、寮が良いとのことだ」
「ですよね~」
そこは、めちゃくちゃ残念だった。
「そういうわけで、お邪魔します。りこちゃん、俺は紅茶で」
「じゃあ、僕はコーヒーで」
「おいおいおい。おーい」
手土産の蕎麦を抱えながら、僕は絶叫する。
どうやら、騒がしい日常が戻ってきてしまったようだ。
僕はガックリと肩を落とす。
「あれ、ハルちゃん。学校?休みじゃないの?」
「生き物係の野外活動。新しい花の種を植えるんだ。それに家は、騒がしいからな」
「そんなこと言って、早く神崎さんに会いたいだけじゃないの」
ニヤリとりこが笑う。
当たらずとも遠からずだ。
明るい日差しの中、僕は足を踏み出した。
願わくば、この穏やかな幸せながずっと続きますように。
閃光のシリウス 一部完結
長い間、有り難うございました。
こちらで一部完結になります。心のゆとりができましたら、ひっそりと二部を書き始めるか。気分転換に短編を書くかもしれません。そのときは、また宜しくお願いします。