星に願いを
僕は、思いきって神崎さんに叫んだ。
「よろしければ、僕と一曲踊りませんか?できれば、踊ってやってください」
神崎さんは、立ち上がり近づいてくる。
青い髪が風に揺れる。
「あの、疲れてるのはわかってるんだ。でも、こんな綺麗な夜だもの君と踊りたいんだ」
僕は熱弁を震わせる。
「どれだけ踊りたいだ、君は。だが、そこまで頼まれて無下にする奴はおらんだろ」
呆れた顔で、細い白い手を彼女は差し出す。
その手を僕はゆっくりと取る。
キャンプファイアーの炎に照らされて、まわりは暖かなオレンジ色。暗い夜にたくさんの星の煌めき。都会では、体験できないような光景だった。
僕らはステップを踏み始めた。
「楽しいオリエンテーションだったね」
「遭難して怪我までしたのにか?」
「だって、神崎さんの友達になれたから」
「そう」
「神崎さんは楽しかった?」
「楽しかったとは違うが、良い経験が積めた。それに覚悟が出来た。私が、私の人生を歩む覚悟」
「そうなんだね」
「ああ、君の。ハルのおかげだな」
「僕も神崎さんのおかげかな」
二人は、静かに笑いあって、フォークダンスを踊った。
人々の笑い声が遠くまで聞こえていた。
こんなに沢山の星があるなら、僕の願いごとも叶うかもしれないなんて思ってしまう。これからも神崎さんと幸せな時間を過ごしたい。
たとえ、それが瞬きほどの刹那な瞬間でも。
ハルは、その夜。
煌めく一筋の星が流れるのを見た。
本当に宇宙人でも出てきそう。
こんな広い世界なら存在するのかもしれない。
僕が見つけられないだけで。
それなら彼らにも会ってみたいものだ。
次の日、僕らはバスに乗って要塞都市アトランティスに帰っていった。
僕はまだ知らなかった。
これから起こる出来事や地球の顛末を。
甘酸っぱい恋心をもて余した学生でしかなかった。
この時の僕は。