欲望の先に
私は絶望した。
空気は汚染されている、緑もない。
動物も虫もほとんどが死に絶えている。
いるのは、程度の低い人間のみ。
次に私は歓喜した。
この星は自由だ。
力あるものが全てを手する世界。
そう、ここには身分がなかった。
私には素晴らしい身体能力と頭脳と容姿があった。ないのは、王族という身分だけ。だからこそ思った、上に立つことが叶わぬなら近い場所にいたいと。だから、彼女と他の王族の間を巧く立ち回っていた。その隣で、眺めの良い場所で見下ろしたいという願望が押さえられなかった。
だが、もうそんなことは思うまい。
帰るすべはないし、帰りたいと思わない。
ここならば、欲しいものが手にはいる。
あんな小娘の腰巾着などまっぴらだ。
私は、欲しい。
地位も権力も、金も名声も。
私は、時がくれば表舞台に上がる。
まぁ、あの方は反対するだろうが。
「どうやらお互い違う勢力についたようですね、ルーデンビリア様」
長い艶のある黒髪をかきあげシダは微笑を浮かべる。
「私はすでに政府と取引を致しましたよ。我々の保護と引き替えに、我々の情報を差し上げました。彼らは実に友好的だった。とても私に興味があるようでね。でも、私にも忠義というもがありますから、あなたのことは話してません。そして、これからも話すことはないでしょう。もう、あなたは要らない存在なので私が葬ってあげましょう。これは、ただの挨拶。警告みたいなものですよ。いずれまた会いましょう。お姫様」
暗い部屋のモニターを眺めながら、シダは恍惚の表情を浮かべていた。
映るのは、美しい水色の髪の少女。
青い海のような瞳の白い肌の少女。
とても聡明な我が主になるはずだった少女。
「こんな喜ばしことがあるのでしょうか。あなたを直接手にかけることが出来るなんて。こんなことあの星では許されることではなかった。ああ、ゾクゾクする」
ジダは歓喜に体を震わせながら悶える。
その少女の顔を思い浮かべながら。