圧縮爆発
りこは静かに座りながら、事案していた。
この霧はおかしい。
突然のことで、理性を欠いてしまったが思い返す。
勿論、環境破壊の進んだこの星だ。
別におかしいことは何もない。しかし、それでもこんなに濃度の高い霧が短時間に、発生するものだろうか。
警報が遅れるなんてことは、このテクノロジーの進んだ地球であり得るのだろうか。
避難警告の遅れは、人命にかかわる。それゆえ何重にも警戒しているはずなのに。間に合わなかったとでもいゆうのか。
不自然だ。
「どうした蒼りこ。冬子様のことだ。必ずお前の兄を連れて帰ってくるだろう」
神室は私の様子を心配して声を掛けた。
「それは私もそう思う。けど、そうじゃない」
りこは眉をしかめる。
「おかしいと思わない?おかしいでしょ」
「なにがだ」
「霧よ。霧。霧がおかしいの」
「蒼りこ。この星ではよくあることじゃないのか?」
「ええ、よくあることよ。でも変よ」
「変とは?」
「ありえないわ。こんなに濃度が高いなんてありえない。まるでそう。これは、圧縮した霧が爆発したんじゃないかしら?」
「なんだと」
りこは、チャームポイントのツインテールを揺らして立ち上がる。
「つまり人為的に起こされたんじゃないかってこと」
強く言い放った。
「ほんなばかな」
祐希は保存食のクッキーを食べながらフガフガ聞き返す。
「お前は、食べ終わるまで何も喋るな。緊張感がなくなるから」
神室がうなだれるながら、祐希の肩を叩く。
「濃度があの時、一番高かったのは私達が宇宙船の中にいたとき。スレイブで濃度率を調べてもあのときのあの場所がもっとも高い。予定より作業が押して遅くなったけど、あのまま外に出ていたら危なかった」
「偶然ではないのか。そんなこと出来るわけない」
「そうかしら?」
「そもそも霧は自然に発生するものだろうか」
「そうよ。でも意図的に発生出来るとしたら?」
「そんなこと出来るわけあるか」
神室は反論した。
「たとえばよ。スレイブを使ったならば可能かもしれない」
りこは、指を出して空中に四角の絵をスラスラ描く。
スレイブでそれを立体化して見せた。
「私は、まだ適性検査も受けないしスレイブについては本当に初心者よ。でも、スレイブには無限の可能性を感じるわ。もっと知識や技術がある人ならいろんなことができるかも。たとえば、このキューブ。小さいけれど、限界まで強度をあげることができるとしたら。たとえば、中に空気を圧縮することが出来る」
「そうだとしたら、何だ?」
「出来ないかな?霧を圧縮して運ぶことが」
「馬鹿言え、そんなことが……」
途中でその語尾は消える。
「出来ないって言いきれる?いま、出来るかもって思わなかった?たとえば、それが可能な実験を繰り返してみたら、精度はあがるはず。この日本にも優秀な研究者や技術者はるはずなのだから。今回のは試してみたって感じかしら。それでも、邪魔者が排除できれば儲けものってね。そこまでの周到な計画ではなかったようね」
「そんな大がかりなこと……」
唸りながら神室は吠える。
目を細めながらりこは言った。
「別におかしなことじゃない。宇宙人の残党を始末できるのならね。たとえば政府の連中とか」
「そんなまさか。気付かれているはずがない」
「どうだかね」
りこはため息をつく。
「だとしたら身内に怪しい宇宙人はいないの?協力するんだから、全部教えて。生き残ったのは、あなた達だけなの。何人いるの?私だって身の危険に晒されんだから聞く権利はあるわ。それに、なによりハルちゃんを危険な目に合わせてしまったのが許せないわ」
神室は押し黙る。
「別に内通者がいるとか思ってないけど、危険を犯している以上は私も自分の身を守らないといけない。なによりハルちゃんをね」
「そうだな。可能性は考えておいたほうがいいな。真実は闇の中だか。一人思いあたる奴がいる。確証はない、敵でないことを祈るのみだ」
「私が闇になんて葬らせないわ。だから教えて」
長髪の黒髪。飄々とした男を思い浮かべる。
「奴の名前はシダという……」
そして、重い口を開いた。




