表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/121

糖分





 夢を見た。

 顔はよく覚えてないが、僕と同じくらいの年齢でかっこよかった。

 非常に身軽な少年だったように思う。


 いまでも、手を捕まれて走ったのを覚えている。


 僕もあんな風になれたらよかったのに。





 まどろみの中は、ハルはぼんやり目を覚ます。

「しまった。永眠するところだった」



 もう夜も遅いだろう。

 それでも霧はいっこうに消えてはくれなかった。スレイブで作った薄いフィルターも溶けるように消えてしまった。


 やはり技術の差があるのだろう。日々、頑張っているとはいえスレイブを使い始めたのはまだ最近。うまくは使えない。


 本当にまぬけな話だ。


 好きな女の子を庇って、死ぬならわかる。だが、彼女を助ける前に崖で足を踏み外すなんて恥ずかし過ぎるだろ。やはり、どうにかしなければ。



 崖にもたれかかりながら、ハルは立ち上がる。


「ファイト~。一発」

 そして、崖を登り始める。








 ザーザー。ザー。





 そして、勢いよく滑り落ちる。

「うん、わかってた……」


 僕の非力な腕力では、登ることも出来ない。せめて、オロナミンCがあれば話は違っていただろう。昔の日本人はあれで崖を登っていた聞く。





 もうマジでほんとに。誰かの救助を待つしかないが、僕の体力にも限りある。なにかないか。なにか。



 ハルは身の回りを探る。



「こ、これは」

 ポケットから出てきたものは、チョコだった。






 嬉しいけど、これじゃない。

 これじゃないけど。




 ハルはそのチョコを口に入れる。

「糖分。うまい」


 思わず、顔がにやけてしまう。そういえば、お腹すいてたな。妹がオリエンテーションに行く前に持たせてくれたっけ。さすが、僕の妹。



 可愛い妹の笑顔を浮かべながら、ハルは暖かい気持ちになった。


「よし。頑張って家に帰るぞ」




 なんだか力がみなぎってくる気がした。






 

 










 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ