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騙しあい





 冬子は深々と教員達に頭を下げた。

「申し訳ありません。私のせいです」



「まぁ、そんなことないわよ」

「そうだぞ、神崎。こんなことは予想できなかっただろう」

 誰も彼女を責めるものはいなかった。



「いえ、私が霧の発生範囲や規模を確認しようと勝手な行動を取ってしまい。避難に遅れたため、私を探しに行った蒼くんが遭難してしまったのです」


「いや、いや。君はすぐ合流したじゃないか。先走ってしまった蒼ハルに問題があるのだ。君が責任を感じることはない」

「これは実行委員の私の責任です。彼に問題はありません」



 意を決したように冬子は顔を上げる。



「私に彼を探しに行かせて下さい」

 教員達は、ざわめく。


「なにを馬鹿な。霧が収まるまで待つんだ」


「霧がいつ収まるかわかりません。それに戻ってこれないのは、怪我をしてる可能性もあります」 

 冬子は食い下がる。


「しかし、もし何かあってAAランクの生徒になにかあっては」

 いくら優等生の冬子の頼みであっても、教員達は渋る。


「蒼くんだって、この学校の生徒です」

「しかし、彼はDランクだ」


 

 この地球人というのは、ランクによって管理されている。

 まず、ランクを持つ者と持たない者。


 これは、この過酷な環境を生き抜くために人類は体内にナノマシンを入れた。そのナノマシンの恩恵に預かれてるのがランクを持っているのだ。


 それ以外は極めて、酷い生活を送ることになる。


 すべては、適性検査でわかるようになっている。そして、ランクの中でもまた序列がある。勿論、それは上下はする。ただ、概ねはそのままの数値だ。

 そして、この叡知を結集した学校に入るのもDランク以下は不可能だ。



「それが、何です。この学校に集められた生徒はみな、今後この地球を背負う優秀な人材ばかりです。それを一人でも失うのは、大きな損失」

「いや、しかし。君にもしものことがあっては、理事長になんと言えば」



「危なくなったらすぐに戻って来ます。私も自分の身が大事ですから、でも一時間でいいので時間を下さい。私はすでにスレイブを使いこなせます。これはフィルターにして、空気中の毒素を分解できます。長くは持ちませんが」




「そ、そんなことが出来るのか?」

 今度は違うざわめきが起こる。



 不敵な笑みを冬子は浮かべた。

「勿論です。私の優秀さはすでにご存知かと」



 それは、有無を言わせない圧力があった。





















「そんなことは出来ませんよね」

 淡々と冷めた言葉が投げかけられる。



「当たり前だろ。そもそも、スレイブはナノマシンありき技術。そもそも、私は地球人ではないのだからスレイブはそんなに早く使いこなせるか」


 真顔の返答に、相馬ジュリは無言だった。


「別によいだろ。そもそも、我々は彼らより頑丈な体を持っている。スレイブ使ったことにしても構わんだろう」


「しかし、あの紫の霧はこの星の特有のもの。何かあってからでは。用心した方がいいと私は思います。そもそも、そこまでして何故?彼が心配なのですか?心配という感情は私達にはわかりませんよね」


 冬子はジュリを振り返る。

「そうだな。私も心配という感情はあまりわからない」


「でしたら何故?彼がよい人なのはわかりますが、冬子様がそこまでする程のものだと思いませんが」

 本当に不思議そうな顔でジュリは聞く。




「そうだな。私にもよくわからない」



 感情に乏しい自分にはわからない。

 でも、どうしてだろうかあの優しい笑顔が消えてしまったらと考えると此処でじっと帰りを待つことなんて出来なかった。














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