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君を探して
冬子は、呆然と目を丸くした。
「いないとは?」
ゆっくりと、そう口を開く。
「いやね、俺は止めたんだけど。あいつ神崎さんがいないのが心配で探しに行くって聞かなくって。神崎さんはしっかりしてるし、心配ないって言ったんだけど」
自分のクラスに辿り着けば、早々にクラスメイトの遠坂に捕まって聞かされた事実に体が固まった。
深呼吸をして、冬子は微笑んで見せた。
「心配しないで、蒼くんのことは私に任せて。取り敢えず、遠坂くんは私の代わりにクラスの点呼をお願い。私はまず、彼のことを担任と先生方に報告してくるわ」
その美しい微笑は周りのもの達を安心させる。
「わ、わかったよ。神崎さん」
「有り難う」
念押しのように冬子はもう一度微笑む。
ただ、心の中は冷えきっていた。
教員達に報告しても、結局は霧が収まるまでは待機になるだろうと予想できたからだ。
なぜだろうか。
私達は、感情より理性を重きおく種族であるのに。
冬子は冬子は眉をひそめる。
なぜだろうか。
私は今すぐ、君を探しに走りだしたくてたまらなかった。
いま君はどこにいるのだろうか。