合流
生徒の顔には、不安や動揺が現れていた。
しかし、それでも適性検査で選ばれた優秀な人材である自覚はあるようで誰一人取り乱すものはいなかった。生徒会、実行委員、教師達の指示に従って速やかに避難を始める。
そこは人間にしては、さすがだとジュリは感心した。
ザワザワとした人混みの中、遠くに見知った顔を見つけた。
思わず呼び止める。
「祐希!神室!」
そして、向こうもこちらに気が付いた様子で駆け寄ってきた。
「状況は?」
少しばかり焦ったように神室が尋ねる。
「有毒成分の霧だ。すぐにおさまればいいが、長引くと人体に影響がでるだろう。身動きができなくなる前に移動する」
「わっかった。すぐに、手伝う。遅れてすまなかった」
「それはもういい。行くぞ」
ジュリはそう言って踵を返す。
「なぁ、冬子様はどうした?」
ふと、祐希は口を開く。
「お前達を探しに行ったのだ。入れ違いになったようだな。だが、戻ろうなどと考えるなよ。あまり冬子様を煩わせるな。あの方は我々がいなくても困ることはない」
厳しい視線をジュリは送る。
「そ、そうだな」
そして三人は移動を始める。
「どうした?ジュリ」
「いや、二人だけだな。なんでもない」
一瞬、視線を何もないところに向けてるジュリ。
「ははっ。あたりまえだろ」
祐希は、乾いた笑いを浮かべながら冷や汗を流した。