愛のために
「なんかおかしくない?」
そんな言葉が口をついた。
「外の様子が気になるわ。それにもうすぐ30分よ。戻りましょう」
そんな様子のりこに神室はやれやれといった表情をした。
「時間を見ていたのか」
「勿論。この宇宙船に入った瞬間から、私のスレイブはカウントしてるわ」
「だが、もう少し情報を収集したい」
「おい。りこちゃんの言うとおりだ。そろそろ戻らないと怪しまれるぞ。ここまで、来ることができただけも良しとするぞ」
「しかし」
神室は渋る。
「俺達は、いいけど。りこちゃんまで危険に晒せないだろ。早く引き上げるぞ。あまり欲をかくな」
厳しい顔で祐希が言う。
「わ、わかった。悪かったよ」
それから三人は、走りながら撤退する。
「ところで、りこちゃん。おかしいって何?」
「わっ、かんないけど。変な感じ。ハルちゃんが呼んでるような気がするの。なんか凄く嫌な感じ」
「おまえ、テレパスか?」
不思議そうに神室が聞く。
「違うわよ。地球人的にいえば、第六感。虫の知らせみたいなものかしら。とにかく私の愛しのハルちゃんが心配だわ。早く戻りましょう」
「最近いつも思うのだが。兄妹だよな。ただの?」
「そうよ。美しき兄妹愛よ。これが人間の美徳よ。覚えておいてね」
そう叫びながら、りこは全力疾走する。
扉に手をかけ、外にでた。
「ハルちゃん、いま行くわ」
「行ったら駄目だろ。内緒でオリエンテーションに来てるんだからな。大人しくテントに………」
ドンッ。
突然止まったりこに、神室を軽くぶつかってしまった。
「わ、悪い。どうした蒼りこ?」
目に入ったのは、すべてを多い尽くす霧だった。
濃い紫色の霧。
次の瞬間。切り裂くような警報が辺りに鳴り響いていた。




