雷鳴
おだやかなに流れる時間。
就寝前のひとときをみな各々楽しんでいた。
その空気を切り裂くサイレンが雷鳴のように鳴り響くまでは。
ハルはテントの中で、遠阪とトランプをしていた。
「いや、マジで俺もう都会に帰りたいわ。ゲームはないし、コンビニはないし。虫はいるし。まぁ、空気は綺麗なのは評価するけどな」
ぶーたれながら遠阪はトランプをひく。
「僕はけっこう好きだけどな。空が高いから星も素敵だと思うよ」
「晴れていればだろう。曇ってるじゃん」
そうなのだ。空はいつの間にか雲に覆われて、満点の夜空は隠されてしまっていた。視界も悪い。そのせいもあるのか、宇宙船を探しに行くなどという奇行には遠阪は走らなかった。
伸びた指からは、カードが引かれる。
残ったのは、ジョーカーだった。
「はい。俺の勝ち。学校に帰ったらジュースおごりな」
「わかった、わかった」
そして、僕は立ち上がる。
「おっ、どうした?」
「神崎さん、もう仕事終わったかなって」
「おっ、振られても頑張るね」
「ち、ちがうよ。もう暗いし、危ないから。ちょっと手伝ってくるだけだよ」
苦しい言い訳をしながら、ハルはテントから出る。
紫色の霧があたりに充満していた。
「えっ?」
ミストの粒子が入らないように反射的にハルは口をふさいで、テントを締めた。心臓はバクバクと音を立てる。
「な、なんだよ」
遠阪が目を丸くする。
「紫色の霧だ。こんな濃度、アトランティスでも見たことない」
次の瞬間、全てを切り裂く警報が荒々しく鳴り響く。